第6話

**ハートの形**




「幸せの形…?う〜ん…」


考える私の目の前で、涼子がはずした
ピアスのルビーが赤く光った 

いま頭に浮かぶのは…やっぱり


「そうだね ハートの形かな〜」


頷く…涼子の口元がほころぶ


『ハートの形ね 広海さんならそう答えるって思ってたわ(笑)じゃあ…ピアスは幸せの形でね』


「あは…わかりました じゃあハートで(笑)」


さっきまで寂しいと感じた瞳が大きく輝いた


ルビーのピアスを摘んで笑う涼子に
不思議なつながりを感じた


…もしかして 運命の人なのかもしれない
…いや…そんなわけないよね


涼子はきっとそんな風には思っていないだろう


きっと酔いにまかせた言葉遊び
その場限りの自棄酒のお相手
BARを出れば 楽しかったわと
手を振って涼子は消えて行くのだろう


勝手に一目惚れをして有頂天になってる自分がとても滑稽に思えた




『どうしたの 広海さん?』


無口になった私に涼子が首をかしげた


「あっ、いえ 水割りとっても薄くって美味しくないなって〜(苦笑)」


私は溶けた氷で薄くなった水割りを飲み干した


涼子はそんな私を笑みを浮かべて見つめた


『自棄酒 オーダーしましょう 広海さん(笑)』


メニューを手に取る涼子の綺麗な横顔のラインにまたも見とれた

広海さんは水割りでいいのね?とふり向く涼子の栗色の髪が揺れる

彼女の素敵な瞳に付き合っていられるのならこの場限りでもいい…



赤いカクテルと水割りがテーブルに置かれた


『広海さん さっきの話の続き 訊いてくれる?』


「ええ 聞かせて下さい」


少しでも傷心が癒せるのなら…
どんな話でも訊いてあげたい



『私ね 実は…』


手にしたグラスに視線を落とす涼子


「……」



『…お見合いしたひとと結婚することにしたの』


「えっ…」




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