第5話
**幸せの形**
カウンターに真っ直ぐ座りなおす涼子
横顔を向けたのは、
瞳のなかの悲しみを隠すためだろうか…
愁いを帯びた長い睫毛がテーブルに影をつくる
『…彼女が初めてだったの…』
「えっ 初めてって?」
『女の人を好きになったのがね…』
涼子はグラスの氷を揺らす
『彼女が 私のボロボロになった心を修復してくれたの』
「失恋?」
『うん、つまんない男と付き合ってたのよ…馬鹿だったわ』
なるほど涼子は元々は異性愛者(ノンケ)なんだなと理解できた
『彼女と別れた理由はね・・・実は私 お見合いしたの』
「それは涼子さんが望んでお見合いしたんじゃないんでしょ?」
『ええ 勿論 相手は父の恩師の息子さんで
形だけでいいからって 父に何度も頼まれて断れなくて…』
「う〜ん お見合いしただけで 結婚する気は涼子さんはないんだから
別れようってすぐ言っちゃう彼女の気持理解できないな〜」
『・・・』
しばらく彼女は無言だった
グラスを置きテーブルに
並べたルビのーピアスを指先で転がしながら涼子は私に聞いた
『…ねえ 広海さん 幸せってどんな形してると思う