第4話
**涼子と広海**
しばらく他愛ない話をした後 もう一度聞いてみた
『あの…冗談ですよね…』
『えっ なにが?』
『ピアス受取ってもらえないですよね?』
『ふふっ…』
意味深に笑う彼女の瞳が輝いた
『ねえ 受け取る前に貴女の名前が知りたいわ…』
彼女の見つめる瞳にまた胸の鼓動が鳴り出した
『あっ ごめんね 人に名前聞くなら先に自分が名乗らなきゃね…』
『私は…りょうこ 涼しい子って書きます』
『涼子さん…。 私はひろみって言います』
『ひろみ…いい名前ね ねっどんな字?』
『広い海…』
『広い海でひろみ(広海)なるほどね…(微笑)』
『広くて温かなその胸は…大きな海のよう…その海で私を泳がせてほしいな…
貴女はなんとなくそんなイメージよ』
『えっ…そ…そうですか…なんだかすごく照れちゃうな…』
照れと胸の鼓動でグラスを持つ手が震えた
目の前の素敵な瞳のせいで…自棄酒はすすまない
グラスのなかの水割りはすっかり氷がとけて薄くなっていた
涼子がテーブルのルビーピアスを指先で転がす
『ねぇ 訊かせてほしいな…?』
『えっ 何をですか?』
『広海さんが 失恋した理由(苦笑)』
『……』
私は返答する言葉に迷い戸惑った
振られた理由なんてなんてことはない…
それ以上にもう彼女を思い出したくなかった
『ごめんね 私ったら…広海さんは話したくないのよね』
『い…いえ…そんなことないですけど(苦笑)』
『私は訊いて欲しいな… ねぇ 訊いてくれる?』