第2話
**思い出消去の夜**
椅子に座りなおした彼女はグラスを見つめる
『もういいんです…見つからなくても…』
『えっ…どうして?』
『彼女から誕生日に貰ったピアスなの…今夜でつけるの最後だし…ちょうどいい(苦笑)』
『彼女からの…じゃあ 探さなきゃ〜でもどうして最後なの?』
『別れたの…』
『だから…今夜は 思い出消去の夜(苦笑)』
彼女はもう片方のピアスをはずした
そして手のひらにのせると 綺麗な笑みを浮かべた
『今日 私の誕生日なの…だから今夜で最後…』
誕生日にこんな綺麗な人がひとりお酒を飲んでるなんて 寂しすぎる…悲しすぎるよ
彼女の横顔に…自然に口から言葉が出た
『あの…そのピアスの代わりプレゼントしてもいいですか…』
(なんて大胆なことを言ってるんだろう…会ったばかりの人に)
『いまのは冗談』と照れ笑いでいいかけたとき
彼女がはずしたピアスを私の前に差し出した
『今度は赤いハートの形のピアスがいいな(微笑)』