第1話

**落ちたピアス**




週末の夜 振られたばかりの私は
自棄酒と新しい出逢いを求めてレディースバーに出向いた


賑わう店内 満席・・・かな?と見渡すと
カウンターの角でひとりグラスを揺らす女性が目に入った


その女性の隣の席が空いていた



『あの…こちらの席よろしいですか?』


『ええ どうそ・・・』


微笑む彼女におもわず見とれた…


(・・・綺麗な人だな〜)


グラスをもつ白く細長い指先


胸元が大きく開いた赤いニットのカットソー
揺れる栗色の柔らかな長い髪


(誰かと待ち合わせなのだろうか…)



グラスに口をつける彼女の横顔にまた見とれた


視線を感じたのか振り向いた彼女と目が合った


話がしたいこの綺麗な人と…



『あっ…あの…誰かと待ち合わせですか?』



『いえ…一人です』


微笑みながら彼女は耳元から髪をかきあげた
 
その瞬間…
乾いた音がしてテーブルに何かが落下し弾んで床に転がった


『…あっ…どうしょうピアスが落ちちゃった』


彼女は耳たぶを押さえた


タイトなスカートの裾を気にしながら椅子を下り
探そうとする彼女を制した


『あっ 私が探しますから 座っててください…』


『そんな…悪いわ…一緒に探します…』


彼女にピアスの形と色を訊く


『ルビーで4mmくらいの丸いのです…』


二人で床に屈みこむ…
なかなかその小さな赤い光りものは見つからない


『…ないですね…』


呟く私に…屈んだ彼女が私を促した


『私の為に…すみません この姿勢辛いし(苦笑) 一旦 座りましょうか…』



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