エンドロールが終わり場内が明るくなった


真ん中あたりの座席を見回すが彼女らしき人は見当たらない

(もう 出たのかな…)

リオはホールを出て
ロビーのソファに向かった


さっきと同じ場所に座る彼女の姿が見えた



『お待たせしました』


隣りに座ったリオに彼女はさっきと同じ笑みを浮かべた

「携帯が光ったんでエンドロールの途中で出ちゃったんです  今 座ったところです」


次回の上映までどの作品も時間が空くのか
ロビーのソファに座っているのはリオと彼女だけだった


『なかなか面白かったですね』


「ええ、選ばれた作品だけにね(笑)」


彼女は 早速 目を輝かせて次々レビューを並べた


「コメディタッチな流れが観やすかったですね
終盤のシーンは、シェイクスピアの喜劇を連想させるような展開で楽しめたし、
18世紀のベネチュアの街並みや背景がとても美しかった。
そうそう…気球に乗って花火を観るシーンが素敵だったな…」


『そうですね 気球から花火…私もあのシーンは印象にのこっています』


「カサノバは、ひとりの女性に縛られる愛で満足できたのかしら…」



『う〜ん プレイボーイの彼も魅力的だけど、ただひとりの女性に一途な愛を捧げる
カサノバの方がかっこいいなと私は思いますよ(微笑)』


「そうね…」


リオを見詰める彼女の瞳に胸が高鳴った


『とにかく…Happyendで終ってよかったですね』


早々と感想を締めくくったのは、
映画の余韻を語り合うよりも彼女のことを知りたい思ったからだ



『あの お名前聞いていいですか? わたしはリオといいます』


「リオさん(微笑)…霧子といいます」


『き・り・こさん…どんな字?』


「無数の微小な水滴となって浮遊する現象の霧…子は…子供の子」


『霧子…。ステキなお名前ですね、あなたにピッタリな気がする』


「そうかしら 自分では幸薄い女ってイメージなんですけど(笑)」


『ご両親が付けられたんですよね?』


「ええ 父がつけたんです」


『なにか意味があるのかな、苗字に合う画数とか?』


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〜beloved〜霧子

出逢い〜映画館〜(4)