霧子との出逢い
それは2年前の初夏だった
その日は、いつになく早く目が覚めた
予定のない休日をどう過ごそうかと快晴の眩しい空を眺め思案した
遅めのブランチをとりながらつけたラジオからポピュラーな映画音楽が流れていた
懐かしいなと耳を傾けながらふと思いたった
そうだ
久しぶりに映画でも観に行こうか
着替えが済んで…
テーブルの上のキーを手に取ったとき
側においてある小さなチョコが3箱目に付いた
昨夜、夕子にもらったチョコだった
得意気に話す夕子の顔が浮かんだ
「前にリオが美味しいって言ってくれたチョコ いつも売り切れなのにね
今日、お店 覗いたらたくさん並んでたの リオの為にたくさん買っちゃったわ♪」
やれやれ(苦笑)映画鑑賞のお供に持っていこう…
そのチョコを2箱バックに入れた
特に観たい映画があるわけではない
映画館に着き 立て看板に書かれている上映作品と上映時間を一通り眺め
待ち時間の短い作品を探した
待ち時間が短い作品が二つあった
「カサノバ」
洋画のこの作品に決め館内に入った
チケットカウンターに向かうと丁度真ん中の窓口が空いた
「カサノバを一枚」
するととなりの窓口でも同じく
「カサノバ 一枚ください」と女性の声がした
何気に隣のその女性に視線を向けるとその女性もリオに視線を向けた
目が合うと彼女は軽く微笑んだ
リオも失礼のない笑みを返す
彼女はチケットを受け取ると、館外へ出る扉に向かって歩いていく
彼女の後ろ姿をリオは目で追った
歩く姿にスタイルの良さが窺えた(セクシーな美人だな…)
「お客様 お席はどの辺がよろしいですか?」
『…』
彼女に視線が泳いだままのリオに、窓口のお姉さんが繰り返し聞いた
「あの〜お客様 お席はどの辺がよろしいですか?」
はっと、慌ててリオは答えた
『あ、じゃあ 一番後ろの真ん中あたりで』
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〜beloved〜霧子
■出逢い〜映画館〜(1)