ドアを開けると愛しい瞳が微笑んで出迎えた


玄関で軽いkissを交わす リオと霧子


「おかえり リオ… 今夜は早く帰ってこれたのね」


『うん 特別な日だからね だから余計に困ったけどね』


「困ったって?」


『店が跳ねてからのお誘いとチョコ攻めに(笑)』


リオは両手にもった紙袋を掲げた
中から赤い薔薇も見えた


「ほんとにもてる人は困るわね(微笑)どうするのそのチョコ」


『霧子 持って帰る?』


「いらないわ 彼女たちの気持ちを私が食べちゃいけないでしょう
ちゃんともらったことに感謝して全部食べきりなさいな」


『…霧子は優しいね』


リオは霧子の頬を突付く


『そうそう 一番欲しいのは霧子からのチョコなんだけど(笑)』


「リオにチョコはあげないわよ」


『えっ そうなんだ 残念だな』


霧子は笑みを浮かべた


「だって いまあげたら義理チョコになっちゃうじゃない
本命チョコは去年食べてもらってるし 何度もあげないわよ」


『そうだね チョコより霧子が欲しいよ』


「待って…リオ」


抱き寄せようとするリオの腕をするりと抜け
先に食事しましょうと霧子はテーブルに向う


「今日はね 早く来て頑張ったんだから♪」 


ふたつのランチョンマットの上に
見栄えよく並べられた前菜とワイングラス


『ほんとだ 頑張ったんだね 美味しそうじゃん』


ふと ふたつのランチョンマットの間に置かれたスペアキーが目にはいった

いつもは玄関の下駄箱の上にキーを置くのに
今日はどうしてだろう?


霧子が リオの視線に気づき答えた


「あ、明日ね…リオもお休みだし一緒に長く過ごせると思ったら
嬉しくって つい鍵を握ったまま部屋まではいっちゃったのよ 深い意味はないのよリオ(微笑)」


ワイン出さなきゃと…霧子がキッチンに向かう

その背中をリオは追い抱きしめた


『この部屋に入れるのは霧子だけだよ…』


「リオ…」


『霧子 帰らないで ずっとここにいて欲しい』

「……」


何度この台詞を言ったことだろう
その度に霧子が返事に困るのを分っているのに…


『ごめん 霧子』


「リオ」


霧子は…テーブルのスペアキーを手に取った


「ねえ 今度は私がリオにキーを渡すから だから待ってて」


『待ってるよ いつまでも』




抱きしめあう互いの腕が切なさと愛しさで溢れていた

初めて心から愛した人
それは霧子だった

こうしていま自分の腕の中にいるのが本当に信じられないくらい
霧子との恋は困難に満ちた恋だった

いまだってまだ大きな
壁を越えられないでいる 

それは…

ふたりのつかの間の時間が流れていく


食後のデザートにと、リオは生チョコをひとつ開けた


どなたか知りませんがリオ宛のチョコひとつ
いただきますと霧子がチョコに手を合わせた


「チョコで 思い出したわ(笑)」


『え、なにを?』


「リオと初めて逢ったときのこと」

「チョコをたくさん貰ったんだけど
食べませんかって言って声かけてきたんだったよね(笑)」

『ああ そうだったね』


リオは霧子と初めて出逢った
あの映画館を思い出していた


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〜beloved〜霧子

愛しいひと