化粧室に行ってくるねとメグミが席を立った

リオは時計に目をやる
(閉店まで後20分か…)

部屋で待つ愛しい人の顔が過ぎった
心の中でリオは呟く(もう少し…待ってて 霧子)

リオは店内を見回す 
今日はバレンタインデー

スペシャルな日にちなんだフードやドリンクが
各テーブルに並んでいる

ゲストのレディ達は皆 チョコ持参であろう
おしゃべりしながらお目当てのホストを熱い視線で誘っていた

リオは入店を待っていたファンのレディたちから
両手で持てないくらいのチョコを貰った
どのチョコにもハートがついてるメッセージカード付きだったのには笑った




隣のBOX席から甘い誘いの会話が聞こえてくる

「ねえ カオル 昨夜遅くまで頑張って作ったんだから ちゃんと食べてね」

「ハイハイ 全部ちゃんと頂きます」

「ねえ 今夜 私も一緒に頂いてほしいな〜♪」

「えっ…あはは ごちそうさま」

笑いながらグラスを持ち席を立つカオルと目が合った

意味なくリオはカオルと目で笑いを交わす

カオルとリオは入店も同時だったこともありなんでも話せる唯一の同士だった。
容姿もファッションセンスもふたりは良く似ていた
男装しても男のように振る舞うわけでなく、一人称で僕や俺とはいわない
華奢な身体に筋肉をつけるためにトレーニングジムに通うわけでもない
ボーイッシュでカッコいい女性 形容するならば 宝塚の男役といった感じだった。
そんなリオたちを気に入らないと影で言うホストたちもいたが、気にしなかった




…リオは煙草に火をつけもう一度時計を見た


「お待たせ リオ」


席に戻るなりメグミは、肝心なものを渡さなきゃと
ブランドのロゴ入りのバッグから小さな洒落た包みを取り出した

「ねえ リオ 今夜も予定あり?」

『いや 今夜はなし(笑)』

「えっ そうなの〜 じゃあ今夜はひとり?」

「…」

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バレンタイン(1)

Tonight partner by メグミ