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   Runa&Emi(ルナ&エミ



INDEX



           【〜それぞれの愛〜Blue Moonの瞳〜哀しいメロディー〜】




                            
BARの出口でBOX席を見ると
リツコはなにやら深刻な面持ちで男性と話しこんでいた


その様子に…あえて声を掛けずにBARを出た


(さっき…挨拶したし もう帰るところだと言ったからいいかな…)





――BARの近くの深夜までオープンしてるCafe



週末の夜で混む店内 
空いたカウンター席にふたり並んで座った


トオルはカフェオレにシュガーをたっぷりいれると あの夜と一緒だねと笑った


『あのトオルさん…マユさんのことって?』


『あぁ さっきなんだか話しそびれちゃったね』


『私のせいです…ごめんなさい』


トオルは苦笑しながら煙草に火を点けた


『マユがライブのあと楽屋にきたっていったよね…』


『あっ・・・はい…』



トオルがLOVESONGを贈りたい女性ってエミさんだったんですねと言った
マユの睨むような目を思い出した



『エミさんには好きな人がいるから だからLOVESONGいくら歌ってもダメよってね(苦笑)』



視線が動かぬよう・・・強くトオルは私を見つめた



『…その好きな人が誰かってマユが教えてくれた・・』



『・・・・』


私は無言で頷き  そうだったんだ…心の中で納得した


『マユから聞いたとき…やっぱりそうだったんだって思った…なんだか不思議な4角関係だね(苦笑)』


『あの…やっぱりって?』


『最初に逢った夜 BARに戻ったエミさんを迎えにいった時、あの女性(ルナ)と話してるエミさんを見て驚いたんだ…。
あの女性(ルナ)を知ってるの?って聞く エミさんの様子になんとなく感じたんだ マユと同じなのかなってね・・・』





煙草の煙を吐き出す…トオルの横顔をただ私は見つめた



『マユとはね 最初 恋の相談相手だったんだよ

“彼女がいる人を好きになったの” 
“彼女がいるならダメじゃん あきらめろよ”…って

よくマユの自棄酒の相手をしたよ…(苦笑)
その時は好きな人が…女性だってこと知らなかった

そのうちに…もう 好きな人のことあきらめたの 
だから付き合ってほしい…っていわれて あとは成り行きでね』




『ある日のライブに あの女性(ルナ)がきてたんだ 楽屋でマユに友人だと紹介された
あの女性(ルナ)が帰ってから “実は好きだったのはあの女性(ルナ)なの”とカムアウトされたんだ
おまけに“寂しいからトオルに癒して欲しかっただけ…”って 言われてね ダブルパンチ食らったよ(苦笑)』


『マユはイイ子だよ 好きだったよ…けどね…お互いの求めるものがね 違ったんだ』


『ねえ トオルさん マユさんが同時に付き合ってた人がいたって?』


『あぁ…でも 相手が誰だか知らない(苦笑)』


『そうなんですか…』


視線を落とす私にトオルは続けた


『エミさん 心配しなくても…あの女性(ルナ)ではないことはたしかだよ…』


『…えっ…』


『あの女性(ルナ)に聞いてみたらいいよ…』


そういうとトオルはカフェオレを口にした




『僕は理解できるよ…愛する気持は同じさ…』


『エミさんの恋愛対象から外れてるってこと・・・百も承知だよ 何度も言うけど 好きな気持は変わらないんだ 』


『僕に泳がない かたくななその瞳 
わかってるよ 僕を見ていないこと

…って歌詞
 
君は心に想う人がいるかもしれない 
だけど 今夜だけでいい 僕を見てほしいんだ そのままの気持ちで書いたんだ…』



煙草を消し…トオルは胸ポケットからとり出したギターピックを私に笑って差し出した



『ねっ エミさん 勝手に思うくらいは許してくれるよね…』



それぞれの想いが交差する…そんな夜


後に手のひらにのせたこのギターピックが
悲しいメロディーを奏でることも知らずに…