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【栞】
…食後のコーヒーが運ばれた
月曜のお昼休み
会社の近くのボリュームあるランチが人気の店
亜紀子は土曜日に言った約束通りランチに誘ってくれた
「エミー ちょっとトイレいってくるね〜」
亜紀子が席を立つ
コーヒー香りと温もりをカップを持つ両手で感じながら
ルナのことを思っていた
(もう逢えないのかな・・・ううん 逢えるよね)
ルナは絶対私と同じ同性愛者に違いない
そう・・・感じるものがあったから、一瞬で心惹かれたんだ
でも、もしもそうじゃないとしたら・・・あの瞳はなんだろう?
私のこと どんな風にルナは捉えて見つめていたんだろう
同じ、作家の本好きのお友達になれたらいいな〜程度の感じ?
ううん 絶対 あの瞳は違う ルナだって意識してたはずよ
「ちょっとエミー?なにブツブツ独り言 言ってんのよ〜」
席に戻った亜紀子が私の顔を覗きこんでいた
「エミー なんかあったの?土曜に会った時もなんか落ち着かない感じ
だったしさ〜」
「そうかな・・・ あ、亜紀子 土曜は 誘ってくれてありがとうね・・・」
「え、えっありがと?って 今日はお説教覚悟でランチにきたのよ
だって私、誘っておいて途中で帰っちゃったしさ〜」
《・・・亜紀子が誘ってくれなければ、あの日ルナと逢っていなかったんだ
しかも先に帰ってくれたから、あんな展開になったんだし 感謝してる♪ 》
「さては・・・なんかいいことあったんでしょう?」
亜紀子が私の顔を真正面からまじまじと見つめる
「いいこと うん〜少しね」
「何よ〜教えなさいよ〜 エミー」
《・・・ルナとの出逢いの事なんて,亜紀子には言えない》
「実はね〜 すっごく読みたくて探してた本が見つかったの〜」
「はぁ〜 本が?見つかった それだけのこと? なんだ〜つまんない〜」
亜紀子はあきれた顔でコーヒーに口をつける
・・・そう、土曜のあの場面まではよかった だけどそのあとが・・・
「あ、エミもういかなきゃ1時だよ〜戻らなきゃ〜」
レジに向かう亜紀子の後ろを歩きながら ため息をついた
ため息の理由 それは・・・
ルナにもらった 番号の書かれたあの【栞】を私は失くしていた
あれは土曜の帰りの電車の中
ルナの番号を早速携帯にいれようと思いバックの中【栞】を探した
んっ〜ない・・・(汗)
家に着いてバックの中身全部 ひっくり返してもどこにもない
・・・落としたんだ (頭の中真っ白になった)
カフェに? 傘を出すときに? それとも切符を買うとき?
色々思い出すがわからない・・・
どうしょう・・・
もうルナに逢えない・・・連絡できない
窓の外の小降りになった雨を見ながら涙がこぼれた
もしも誰かが拾ってイタズラにダイヤルしたりして(汗)
どうしょう・・・
そんなことになればルナに なんて思われるだろう
いろんなことが頭をよぎり 眠れず朝を迎えた・・・
翌・・日曜日・・・
私はいてもたってもいられず あの地下街とカフェに向かった
【栞】を探す目的・・・
それも勿論だけど見つかる確率は少ないだろう
もうひとつの目的は違う・・
もしかして・・・偶然に
もしかして・・・逢えるかも
いろんな想い 交錯しながら
日曜の雑踏の街をひとり彷徨ったのだった・・・
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