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Runa&Emi(ルナ&エミ


 INDEX



                       【〜哀しい影〜】  




「でもねって? ルナ 何?」


首筋に埋めた顔を上げルナの肩を揺らす
瞑想していたルナの目蓋が開き私を見つめる


「ねぇ エミィ・・・」


窺がう私の髪を撫でながら・・・・腕枕をするルナ


「私・・エミィには隠し事したくないの」


「・・・」


ルナの黒く潤んだ瞳に哀しい影が映る


「エミィが来る前にね・・・リッコが部屋に居たの・・・」


「リツコさんが・・どうして?」


「リッコの荷物 まだ残ってるの 探し物したいっていうから来たの」


次の言葉を聞くのが恐くて
私はルナの腕枕から逃れて背をむけた


「なんだか・・・聞くのが恐い ルナ」



「・・・」



「リッコと一緒に住んでたのは2年間・・・
その間 お互い恋人もできて・・・私がリッコにカムアウトしたのもその頃よ」


(お互い・・・という事は ルナにも恋人がいたんだ)
一瞬 胸が締め付けられた


「恋の終わりもふたり同じ時期だった・・・」


背中に密着するルナの胸の鼓動が伝わる
抱きしめる腕にルナの声がゆっくり響く


「リッコも私も・・・恋に傷つき泣いて
ボロボロでやりきれなかった夜があったの」
「誰かに抱きしめて欲しかった・・・ふたりとも同じ気持ちだった」


「・・・」


「リッコを抱いたの・・・大切な親友なのに・・・」


「ルナ・・」


「私がもし異性愛者だったらそんな関係には
なっていなかったかもしれない・・・」


「エミィ 私とても・・・苦しんだのよ・・自分のしたことに」


ルナの声が震えてるのを感じた



「リッコを愛してた けどそれはね 友達としてよ」



「さっきね リッコにまた愛してほしいって言われたの」



ルナの言葉にあの日のcafeでの
リツコの大きな瞳が脳裏に浮んだ

・・・あなたよりルナと長く時間を過ごしてたのよ
・・・あなたよりルナを知ってるわ

リツコの【弾く瞳】に感じたのはやはり嫉妬だったんだ




「エミィのこと・・・」
「私は 誰よりもエミィを愛してる・・」


リッコにそう言ったわ


背中ごしのルナの声に涙があふれた


「ルナ・・・私も愛してる・・・誰よりも・・・」


身体を回転させルナの胸に顔を埋めた
柔らかな胸に涙がつたう
ルナの愛はいつも全身で感じている
心の痛みも苦しみも全部受けとめてあげたい

(ずっと離れたくないの ルナ・・・)







カーテン越しの空が夜明けの色に変わっていく
ふたりとも一睡も眠っていなかった


「ねぇ ルナ 今日 仕事いくんでしょ?」


「あ〜そうだ 仕事だ〜エミィ・・・(苦笑)」


「私もよ ふたりとも午後出勤ね・・・」


「ホントだね 同じ会社でなくてよかった(笑)」


見詰め合って笑った



「ねぇ ルナ シャワーしてくるね・・・」


ソファに掛けたバスタオルを引っ張り
私はそのままシャワールームに向かった
バックが落ちたことに気付かずに・・・




ソファに置かれたバックがバスタオル
に引きずられ逆さに落ちた



「あっ エミィ・・・バック落ちたよ」


落ちた拍子にバックの中身が絨毯の上にばらまかれた


「まったくぅ〜」


ルナはベットから下り散らばるバックの中身を拾い集めた
ふと・・・転がる小さな三角のプラスチックに指が止まった


手に取ってみて ルナが呟いた


(・・・ん?・・・これってギターのピックね・・・)


それはトオルに送ってもらった夜
トオルがエミに持っていてほしいと渡したピックだった


(ギターのピック・・・?)


シャワーの音を聞きながらルナは
あの夜のマユの電話を思い出した


《ルナ〜大変よ トオルとエミさんがタクシーに乗ったとこ見ちゃったの》



三角のギターピックを見つめるルナの瞳に
再び哀しい影が映る


(エミィ・・どうして・・・)