RUNA&EMI(ルナ&エミ)
〜出逢い〜4
外の雨はまだひどく降り続いてる・・・
《 はぁ〜・・・》
カフェにひとり取り残された私は深いため息をついた
ダメダメ ため息はやめよう・・・幸せが逃げちゃう
朝、亜紀子のメールに気づかぬふりして あのまま寝てればよかったかな
土曜の休日 散々・・。しかも雨のおまけつきだし最悪(苦笑)
もう一杯 コーヒー飲んでから出よう・・・
二杯目はカプチーノにした・・・
帰りに あの本屋にもう一度寄ってみようと ふと思った
カップのカプチーノが半分ほどになったとき・・
背後で声がした・・・
「あの〜すみません・・・」
振り向いた私の瞳に映ったのは・・・さっき本屋で出逢った黒い瞳だった
(さっきから心の中でずっと探していた あの人だった・・・)
「お隣の席 空いてますか?」
その瞳はまっすぐに私を見つめている
突然のドラマのようなシチュエーションに声がでない私
胸の鼓動が鳴りだした
(聞こえたらどうしょう)
「あ、あいてます・・・」やっと声が出た
雨宿り目的で入ってきた人達であろうか 店内は満席だった・・・
唯一 空いてるひとり分の席は私のバックが占領してたのだった
亜紀子が座っていた席に置いてたバックを膝にのせる
その人は手にもったカップをテーブルに静かに置き 会釈した
「すみません・・・ 助かりました」
声と顔の輪郭がぼやけるなか 捉えた瞳は黒く潤んでいた・・
隣に座るその人の空間の空気が動いた瞬間 コーヒーの香りじゃない
いい香りが漂った・・・
いま目の前で起こってる 3度目の偶然の出来事
ううん 違う・・・
この出逢い これは偶然じゃない・・・私は確信した。
あの本屋で絡みあった黒い瞳
一瞬にして・・私は落とされたんだ・・・この人に
《本屋でのこと 憶えてないのかな?》
その人は、手に持った文庫本をテーブルに置くと
灰皿を手元によせ・・・バックからメンソールシガレットを取り出した
そして一本だけ弾き出すとしなやかな動作で火をつけ指にはさんだ・・・。
ぼやけてた輪郭が今、こんな近くではっきりみえる
スタンドカラーの淡いブルーのストライプのシャツ
襟元で揺れるショートレイヤーの黒髪
燻らすタバコの煙の間からシャープな横顔が覗く
かっこいい女性だと思った・・・
(宝塚の男役スターの誰かに似てる^^)
じっと見つめる私の視線に気づき・・・
その人はハッとして手にしてるタバコを持ちかえた
「ごめんなさい・・ タバコ? 煙いですか?」
灰皿に近づけもみ消そうとする
「いえ、全然 平気です・・・ どうぞ 気にしないください」
雨で霞むガラス越しの街を眺めながめている 名も知らぬ人に
とめどなく胸に熱く溢れものを感じる
こんな感情は生まれてはじめてだった
これが一目惚れというものなんだ・・・そう思った
カップとタバコを交互に持つその人の指先に目が行く
自分と同じものを強く感じた
この人絶対ストレートじゃない・・
胸の鼓動は高鳴るばかりだった
このまま去ってしまうのはイヤだと思った
勇気を振り絞り出り 話しかけてみた・・・
「あの〜さっき地下の本屋で会いましたよね?」
その人はタバコの灰を灰皿に落とし首を傾けた
「えっ・・・本屋ですか?・・」
傾けた視線の先にある文庫本に気づくと 私と文庫本をを交互に見た
「あ〜あの時の方ですか〜」
まっすぐ私に向けられた顔に笑みが広がる
私も頷いて笑みを返す・・・
「さっきはどうも・・・」
タバコの火をもみ消しながら
私を見つめる その黒い瞳が潤んだ・・・