INDEX
【弾く瞳】
『エミさん・・・ですよね?』
『えっ、はい・・・』
その声の方をふりむくと
首を傾げて私の左側に微笑む女性が立っていた
その大きな瞳に見覚えがあった
だが、すぐに名前が思い出せず返事に困った
『私、ルナの友人のリツコです^^』
リツコという名で鮮明に記憶が甦った
ルナに連れられていったギャラリー
あの時、ルナの友人だと紹介されたリツコだった
『あっ、あの・・・写真展でギャラリーでお会いした・・・』
リツコが大きな瞳で頷く
その時、丁度エレベーターが着きドアが開いた
乗り込む人の流れに押されエレベーターにリツコと乗った
5階でドアが開き・・・リツコも同じ階で降りた
そのフロアは進物コーナーや、催場やサロンなどが入っていた
私の目的は、進物コーナーだった。リツコはブライダルサロンに
仕事で打ち合わせに来たという
フロアの目的の場所に、歩き出す私にリツコが声を掛けた
『エミさん、私、30分くらいで終ると思うの
よかったら・・・コーヒーでもご一緒しませんか?』
5階のフロアにある、小さな喫茶店
リツコを待つ間にルナからメールが届いた
―エミィ
まだ、仕事中だよエミィー
忙しくって土日出勤になりそう〜
来週までデートはお預けね(寂)
ルナと、会えないなんて・・・寂しい
携帯の画面の文字をかなしく見つめた
返信のメールを打ち込もうとした時
『ごめんね〜、エミさん』
息を切らしてリツコが向かいの席に慌しく座った
リツコは、ルナとの昔話を懐かしそうに話した
ルナとは、高校で知り合い、進んだ大学も一緒だった
リツコは、父がカメラマンだった影響で子供の頃から写真
に興味を持ち自分もその道を選んだ・・・
ルナも、一時カメラに興味をもった時期があった
だがルナは、結局カメラではなく海外で活躍するルポライター
を目指し・・・そして今の職を選んだということ
私は、リツコの話にただ頷くだけだった・・・。
リツコが話すルナは 私の知らない・・・ルナばかりだった
気のせいだろうか・・・
リツコは話しながら、時々 私を弾くような瞳で見る
《あなたより長い間・・・私はルナと一緒にいたのよ》
《あなたより・・・私は、ルナを知ってるのよ》
そんな“弾く瞳”の中に言葉がみえた
こんなに愛してるのに
まだまだ私の知らない・・・ルナがいる
『エミさんと、ルナ お似合いよ・・・』
リツコがまっすぐ私を見つめた
返答に困り私は下を向いた
(そうだね・・リツコがルナのセクシャリティを知らないわけないよね)
そんな私の様子にリツコが話を続けた
『昔、すごく好きになった男の人がいてね 彼を追いかけてニューヨークまで行った事あるの
でもね、大失恋して帰ってきたの・・・(苦笑)』
私は顔を上げて、こんどはリツコをまっすぐ見つめた
『えっ、失恋って・・・ふられちゃったんですか?』
『彼ね、ゲイだったの・・・』
『そのときにルナに、相談色々しててね・・・それで、ルナのこともわかったの・・・』
リツコが、遠い目をした・・・
『・・・』
テーブルに置かれたリツコの携帯が鳴った・・・
『そろそろ戻らなきゃ・・。ごめんね エミさん
なんだか 私1人でおしゃべりしちゃったみたいね(苦笑)』
席を立ち リツコが私の前に移動したとき
ふっと、甘い香りが漂った・・・
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