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Runa&Emi(ルナ&エミ


 INDEX

                      【“強引な抱擁”】

                            


トオルに連れられていった場所は・・・
いつも練習してるという貸しスタジオだった・・・。


折りたたみの椅子をトオルは持ってきて開いた


『エミさん、ここ座ってて・・・』


ギターをアンプにつなぎ・・・なにやら操作をして
『なんか調子わるいな〜・・・』と言いながら
首を捻りトオルはギターを何度も爪弾く


『しょうがない〜・・・、エミさん音悪いけど・・・我慢してね』

トオルはギターを爪弾きメロディーを奏でる・・・♪
そのメロディーは、ふと あの夜、BARで流れていた懐かしい
LOVESONGに重なり ひとりでいたルナを思い出させた

・・・ギターを弾くトオルは、たしかにいい男だと思う
モテないわけないだろう・・・もしかしたらどんな女にもこうして
口説いてるのではないか・・・ふっと思った


『どう?エミさん』


ぼんやり聴いていた私にトオルが首をかしげて微笑んでた


『あ、すごくきれいなメロディーです・・・。素敵な曲だと思います』


『それだけ・・・?(苦笑)』


『え、それだけって・・・?』


『少し、心の傷口は塞がったかな?ってまだまだ ダメだよね(苦笑)』


微かに私は頷いた


・・・そうだ 訊かなきゃあの事


『あの〜トオルさん・・・、キーボードの方探してるんですね?』


『うん・・・、でもなかなかみつからなくってね(苦笑)』


トオルは 前髪をかきあげながらタバコをくわえた


『女性のキーボード奏者を探してるんですか?』


『いや、別に女じゃなくてもいいさ・・・っていうか今度は男がいいな』


・・・・はっきり訊こう


『あの、トオルさん 前いたキーボードの女性は恋人だったの?』


『・・・』


一瞬 トオルのタバコを持つ手が揺れた


『シンジから、訊いたんだ?』


『いえ、亜紀子から・・・(苦笑)』


『そっか〜 エミさんには、ちゃんと話そうって思ってたんだ・・・マユのこと』


『彼女は期限付きでバンドに参加してたんだ・・・。突然辞めたじゃないよ
確かに、うん 付き合ってたよ・・・。でもね 嫌な言い方だけどお互いにね
真剣じゃなかったんだよ だから別れたんだ・・・。これでいい?』


トオルは、灰皿にタバコを押し付けた。


・・・真剣じゃない付き合いって・・・どういうことなんだろう


そうだ肝心なルナのことを訊かなきゃ・・・


『あの〜、この前BARで会った女性とマユさんはお友達?』


『う〜ん、そうなんじゃない 僕は挨拶程度しか話したことないよ
どうして、そんなに気になるの?』


・・・本当にそうなんだろうか・・・(挨拶程度)
じゃああの時の空気はなんだったんだろう 私の思い過ごしなのかな・・・。


『エミさん、もうスタジオ出る時間だから行こうか〜』



トオルがドアの横の照明のスイッチをOFFにする


ドアの外に出ようとしたとき・・・
トオルが私の腕を引き そしてそのまま強引に抱き寄せた


あっと声が出そうなった・・・


『トオルさん・・・離して・・・』逃れようとするが力には適わない


『なにもしないから すこしだけ・・・』


真っ暗でお互いの表情は見えない


『エミさん 僕、マジ(真剣)なんだ』


『・・・』


トオルの広く硬い胸のあたりからメンズコロンと煙草の香りがした


『トオルさん、力ずくなんて・・・ダメよ』


『ごめん・・・』


ようやく腕の力を緩めた トオル・・・


私は、腕から逃れると ドアを開け駆け出していた・・・。


外に出ると・・・雨が降っていた


携帯のコールが鳴っていた・・・(たぶんトオルだろう)


切れたコールの着信番号を見た


もう一度鳴るコール


『もしもし・・・エミさん? エミ・・・』


ルナの声だった・・・


『・・・ルナ・・・』