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【誘惑〜2〜Blue Moon 】
そのBARの店内に亜紀子とはいると、シンジとその友達は既に
カウンター席に座っていた・・・。
アメリカンテイストが溢れる店内に懐かしいAORのサウンドに
シェイカーの音が重なる
『おーい亜紀子〜』
――シンジが私たちに気がつき手招きする
『あ、いた いた・・・』
――亜紀子が二人の席に引っ張っていく
『紹介するね・・・こちら 友達のエミ〜♪』
シンジの隣に座る 長髪で涼しい目元の青年は手に待つグラスの氷を
揺らしながらイスを回転させ私たちの二人に向きをかえた
『はじめまして トオルっていいます よろしく♪』
亜紀子がトオルに話しかける
『ね、シンジに聞いたんだけど トオルくんってバンドやってるだよね?』
『ええ でも、たいしたもんじゃないです 学生時代の仲間とね
趣味でやってるだけですよ』そう言いながら前髪に手をやる
胸元を大きくあけたシャツの首にシルバーのレザーチョーカーが覗く
(なるほど、Rockerを意識してる・・でもなんかナルシストっぽい…)
『でも ベース弾けるなんてカッコいいよね 素敵♪ ね〜エミ』
『うん、そうね^^;』
『おい、亜紀子 そこでたってしゃべってないでさ 座れよ〜』
――シンジが亜紀子の腕を引っ張る
『エミさん〜、この前土曜日 ごめんね、今日はお詫びの飲み会
楽しんでいってよ〜』シンジが亜紀子を横目で見ながら笑う
『そうね〜 さ、さ 座ろう〜え〜と エミはトオル君の隣にね♪』
亜紀子はカウンター席の座る位置を仕切るとシンジの隣に座りなおす
《・・・まったく いきなり2:2にしないでよ(苦笑)》
この雰囲気はやっぱり馴染まない…隣のトオルがルナならいいのに
長髪の横顔に…ふとあの雨の日に隣にいたルナの横顔がよぎった
そうだ、早く店を出てあとで本屋に見に行こう ルナの読んでる
本が読みたいと思った 今は、ルナにすこしでも近づきたい・・・
『エミさん なに飲む?』トオルが目の前にメニューを差し出す
『あ、すみません・・・じゃあ カクテルにしょうかな・・・』
『なんでも 飲める? 僕が選んであげようか〜 』
トオルはカクテルのカラーメニューに目をやる
『マティーニかモスコミュールもいいね 僕はテキーラサンライズが好きな
んだけど エミさんの今夜のイメージは・・・。う〜んこれだ・・・ブルームーン♪』
『ブルームーン・・・?』
『今夜は満月だしね ブルームーン・・・。青い月は妖艶な夜を誘う女性を
イメージさせるんだ・・・。 エミさんの今夜のスタイルに合うね・・・・・・』
・・・トオルは私のブルーのキャミソールの胸元あたりから口びる目へと
視線をうつす
『じ、じゃあ、それ飲んでみようかな〜』絡ませようとする瞳を避けて答えた
トオルはたしかに、女性にもてるタイプだと思う… ギターも弾けるとなると
尚更だろう・・・少女漫画のなかに描かれる様な線の細い顔立ちに長髪、涼しい
目元 ボーイズラブ系かも…なんて勝手に想像してみた。そこでハタと思った
私・・・なんの為に連れてこられたんだろう? ふたつ向こうの席の亜紀子は
シンジと盛り上がってる様子で私とトオルにはまるで見向きもしない
『エミさんは今、彼氏とかいないの?』トオルがタバコに火を点けながら訊く
『いいえ、いません 』
『エミさん 僕は苦手なタイプ? 気に入らなかったんだ?』
トオルはタバコの煙を吐き出しながら 苦笑いをする
やっぱり これはおせっかいな亜紀子のセッティングなんだ。 たしかに亜紀子
の前では”いいひと”いないかなとは言う事あったけど それはカムアウトして
いない私のカムフラージュ”いいひと”は私にとっては男じゃない女だよ(苦笑)
『エミさん、ほらカクテル』
トオルがブルームーンを私の前に置くとさっきの熱い視線をまたおくってきた
その視線を避けるように質問した
『あの・・・、トオルさんは彼女いないの?すごくモテそうな感じだけど』
トオルは2本目のたばこを口にくわえて火をつける
『もし、いたら ここでエミさんにブルームーンをすすめないよ(笑)』
『ね、もしかしてエミさんって、男嫌い?』
そう問うトオルに 思わずカクテルを持つ手が震えそうになる
『僕がタイプじゃないとかそういう感じじゃなくて なんか興味ないって
感じがするんだけど・・・気のせいかな?(笑)』
『あの、そうじゃなくて・・・私 実は最近 失恋しちゃって・・・だからしばらく
恋とかはしたくないっていうか・・・今はそんな感じなんです ごめんなさい』
バイオレットブルーのブルームーンのカクテルグラスに
ルナの潤んだ黒い瞳を思った…
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