TYPE HTMLRuna&Emi(ルナ&エミ)partVXんX


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                   【〜Only you〜only love you〜E】

 

                           


「エミ〜にむかってブーケ投げるからね〜♪」


ここの式場では披露宴が終わって最後にブーケトスをするという
ブーケを掲げ控え室を出る亜紀子に私は笑顔で頷いた


では、新婦の友人 エミさんから祝福のお言葉をどうぞ
司会者の人にマイクを渡され 手が震えた


…エミィ 頑張って
どこからかルナの声が聞えた気がした


雛壇では泣き虫な亜紀子がすでにハンカチを手にしていた
(…亜紀子ったら余計緊張しちゃうじゃない)


深呼吸をして会場をぐるり見渡すと新郎側のテーブル席にトオルの姿が目に入った
新婦側には同僚だったあゆみ夫婦の姿も見えた


胸に手をあててもう一度…深呼吸した 
(…ルナ 頑張るね)


時々 詰まりそうになる胸を抑えながら
亜紀子へのおめでとうのスピーチを私は無事終えた





会場の外に出ると青い空が眩しかった


おめでとうの拍手と歓声を浴びながら
幸せに満ちた笑顔の亜紀子がブーケを手に階段を下りてくる


私の姿をちらりと確認してから亜紀子が後ろを向いた


「じゃあ 投げま〜す」


ブーケが高々と空にむかって飛んだとき


…ひこうき雲だねと誰かの声がした


ブーケから目を離し西の空を見上げた


青い空に白い直線がキレイに伸びている

(ルナ…)


目の前でバサッと音がし
同時に”やった〜キャッチしちゃった〜♪”と嬌声が響いた


ハッとして視線を戻すと目の前ではブーケを手に喜ぶ女性
その女性の頭越しに残念そうな顔の亜紀子と目が合った

心の中で呟いた
…わたしは結婚はできない ううん しないからいいのよ 亜紀子


もう一度 空のひこうき雲を眺めた時だった


目の前の道路からクラクションが響いた


「エミさん〜」


紺色のステーションワゴンがとまり運転席からトオルが私の名を呼んだ


「えっ トオルさん?」


思わず 亜紀子達のほうにふりかえった


新郎シンジが新婦の亜紀子になにやら耳打ちをした
亜紀子が大きく頷き そして私に手を振り微笑んだ


「エミ〜 二次会はいいから いってらっしゃい♪」


いってらっしゃいって…なに?どういうことなんだろう


訳がわからずトオルの車に近づくと、さぁ早く乗って…と助手席に促された


「どこいくの?トオルさん?」

「空港だよ」

「空港?」

「ルナさん ニューヨークにいくんだよね」

「どうして そのことを?」

「マユから聞いたんだ 昨日 ルナさんに用があって電話したらしい 
それで知ったって 急なことでマユも驚いたらしいよ」

「トオルさん…私 見送りは行かない…」

「いまから急げばまだ間に合うよ」

「ううん いいの 余計に辛くなるから…」

車に背を向け歩き出した時 トオルが運転席のドアを開け下りてきた

「ニューヨークは遠いよ…。あとで後悔するほうがもっと辛いよ
エミさん…ルナさんはきっと待ってると思うよ」


その言葉に私は助手席に素直に乗り込んだ



ハイウエイを走らせるトオルの横顔に訊いた

「マユさんは 見送りにいってるの?」

「ううん こなくてもいいって断られたって(苦笑)」

「トオルさん どうして こんなおせっかいな役するの?」

「う〜ん エミさんがずっと 式の間中 寂しそうな顔してたからさ
ほんとなら 2次会で誘惑できるチャンスだったかもしれないのにな〜(笑)」

冗談だよと照れ笑いをする横顔にトオルの優しい人柄が窺えた



エアポートターミナルの停車場に降り立つとトオルが車をターンさせた


「じゃあ 僕は帰るね エミさん 急がなきゃだよ」


「ありがとう トオルさん」


私は、早足で 国際線に向った…