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                【〜Only you〜あなただけ愛してる〜fin〜】

                              〜エピローグ【epilogue】






行き交う旅人達 送迎の人々…
ざわめきに重なりアナウンスが響くフロア

電光掲示板が発着時間をパタパタと回転させていく
わたしはNEW YORK の文字とゲートを探し出発ロビーに急いだ

式が終わって…急げば間に合うことは分かっていた

ひこうき雲に手を振ったって…ルナが気づくわけないじゃない

式の間 ずっと時計ばかり見て
泣きたくなるのをずっと抑えていたくせに

私ったら…何 意地張っていたんだろう

トオルさん おせっかいに感謝するね
でなきゃ 私…一生後悔したかもしれない



『見送りにこなくていいからね…』

 
いつも冷静でクールなルナ
センチメンタルな別れはお断りなんていってたけど
わかってる 本当は私なんかよりもっと辛いんだってこと
わかってる 本当は涙を見せたくないんだってこと


でもね…やっぱり 伝えたいの
文庫本をバックから取り出し握りしめた

(じゃあ…エミィに質問?147頁の最後の行に書いてた台詞は?(笑))

ルナ…答えはね 私もあなたに一番 伝えたい台詞だった



ふたりを結びつけた赤い糸は…この本だった

一年前の雨の日の出逢いを思い出していた
好きな作家の本棚で この本に同時に手を伸ばして…触れた互いの手
あの瞬間 私達は恋に落ちたんだよね


慣れないヒールが急ぐ足にもどかしい
時々 つまずきながら 広いフロアのなかを…ルナの姿を探した 


エスカレーターを上り ルナに似た後姿の女性を追う
早足で追い越し 人違いに落胆しながら…


いろんな場面が頭の中 フラッシュバックする


ルナと過した時間 交わした会話たち
たくさんの愛の言葉 全部 この耳が憶えてる

私だけを見詰めてくれた黒い瞳

ルナの瞳のなかに映る私は
泣いて笑って拗ねて…

私にあわてんぼと笑う
その笑顔が大好きだった

涙を拭ってくれた指先も…
髪を掬ってくれた手も…
抱きしめてくれた腕も…
そして 身体のぬくもりも…

全部 全部…憶えてる


ルナ…異国の地で目指した夢を叶えてね 

そして
ルナの大切な親友
リツコさんの心の傷を癒してあげて…






出発ロビーを見回したときだった
搭乗ゲートに向うルナの背中が見えた


…ルナ


「ルナ!」


駆け寄る私の声にルナが立ち止まった


『エミィ…』


「間に合ってよかった…」


慣れないヒールで急いだ足が痛くて思わずよろけた
華やかなパーティドレスに胸にコサージュ
こんな別れのシーンにはミスマッチな私の姿にルナの黒い瞳が潤んだ

『エミィったら こなくってもいいっていったのに…(微笑)』





搭乗案内のアナウンスが流れるなか私たちは向かい合った


「ルナ いってらっしゃい…遠く離れてても…ずっと見守ってるから」


『ありがとう…エミィ』


私は涙を堪えてまっすぐルナを見詰めた


「ルナ 伝えたいことがあるの…」


手にした文庫本を見てルナが頷いた


「ルナの質問の答え 147頁の最後の台詞 それは私が一番伝えたい台詞だった…」


「〜Only you〜…あなただけ あなただけを愛してる。ルナ…愛してる」


返さなきゃと…閉じた文庫本をルナに差し出したとき 
ずっと堪えていた涙が溢れ出した


『エミィ 返却無期限って 言ったでしょう(微笑)』


文庫本を持ったままの私の手を引きよせ
ルナはやさしくhugをした


『…エミィ…私も…〜Only You〜 エミィだけを愛してる…』

 
ルナの瞳のなかに私だけが映っていた。

     
                           〜fin〜 




                          
                       〜エピローグ【epilogue】〜




異国へ向う翼が飛び立つ

ぼんやりとデッキから
その翼が遠くに消えていくのを見送った


返却無期限の文庫本を胸にあて
ルナの温もりがまだ残る手を重ねた


ねぇ ルナ 待ってるね

手をとりあって
また同じ道歩ける日

信じてる…

〜あなただけ愛してる〜