TYPRuna&Emi(ルナ&エミ)partV


INDEX


                   
 【Tell me why】


                            

ルナはワイングラスを揺らしながら…
お皿に盛られた珍味を摘んで口に運んだ


『ねっ エミィが選んだの?…この珍味(苦笑)』


『ううん おせっかいなおじさんが…美味しいってすすめるから 断れなくて買っちゃったの』


『うん たしかに美味しい  それにワインにもとても合う(笑)』


ルナは笑いながら…ほんのり赤くなった私の頬を撫でた
 
ねえ そろそろ休憩終ろうか…?
ベットに戻る?


そんな会話になるはずだったのに…





『…昨日ね リッコと会ったわ・・・』


ルナの言葉に私はハッとした 
そうだった…
先週、Barでリツコさんと会ったことをルナに話していなかった


ルナとの甘美な時間に夢中で
頭の中から…その言わなきゃがすっかり消えていた


ルナとはあれから忙しくて話す暇もなかった
ならばメールの短文でも報告すればよかったかもしれない
 
なぜだろう…
ルナが休日返上で仕事中に“私は友人達とライブいくの”
そんな浮かれたメールを送るのは少し躊躇ったし…
なによりも文字の会話は解釈の仕方で誤解も少なくない
だから会ってルナの顔を見ながら話したかった


先に切り出されちゃった…


私はグラスのワインを飲み干し座りなおした


『ルナ あ、あのね 話そうって思っていたの…』


『…ん…なにを?』


先週の土曜 亜紀子たちとトオルのライブに行ったこと
会場でマユに会ったこと
そして、帰りに寄った例のBARでリツコに偶然会ったこと
順番に思い出しながら喋る私は…なぜか早口になっていた


『そうだったの…』


ルナは表情を変えることなくうなづいた


『ごめんね ルナ…』


『別に…あやまらなくてもいいんじゃない…』


『…うん…』


ルナの瞳に一瞬よぎった影を感じた
ふたりの間に流れる空気が重くなった気がした


『……』



言葉が出てこない
数分関の沈黙の時


音を絞ったBGMがアコースティックギターの
イントロから始まる〜tell me why〜に変わった


ルナは煙草を一本取り出し火を点けた


『ねぇ エミィ…まだ報告してないことあるでしょ?』


『……』


ルナが指してるのは
それはトオルのことだろう…


自分でもわかってた
何故言えなかったんだろう…


『ルナ…あのね…』 『マユに会ったわ…』


ルナと私は同時に口を開いていた