TYPE HTRuna&Emi(ルナ&エミ)partV


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                     【〜Only you〜そばにいて〜A】

 

                           

ルナが再びニューヨークに行くという…


海の向こうに陽が沈んでいくのが見える
こんな哀しい気持ちで夕陽を眺めたのははじめてだった


帰国する前夜 
リツコの父と食事をしたときにと…ルナは静かに語りだした


「ルナさん お願いがあります
こちらに来て仕事をして貰えませんか…」


「退院しても リツコをあの男のもとへは帰すつもりはない
私のもとで、一緒にカメラの仕事を手伝わせます

こんな お願いするのは、
貴女がこちらでの転職を勧められている話を訊いたからです
…でなければ こんな無理はいいません。
リツコは貴女と一緒にアメリカで仕事するのが夢でした…
ルナさんにとっても夢への一歩なのであれば是非、向ってほしいと私も心から思います
いや…せめて…リツコの心が落ち着くまででいい、傍にいてやって欲しいんです」


『……』


ひとり娘を思う父の縋るような目にどんな返事をすればいいか迷った



丁度そのときだった
リツコの父の携帯が鳴った


その電話はてっきり出版社からの返事だと思ったが…


「わかりました すぐ行きます」


短く答え電話を切った 父の表情は曇っていた


「リツコが病室を無断で抜け出そうとしたらしいです
タクシーに乗り込もうとしたところを
探していたナースが見つけ部屋に連れ戻したようです。」







リツコの父と食事もそこそこに病院に駆けつけた

病室に入るとリツコはベットで点滴を受けていた

リツコは父とルナを交互に見詰め よかった…と頷いた


「ルナ…まだNYにいたんだ ルナ 帰っちゃったのかと思った」


リツコは潤んだ瞳で…手を伸ばした
その手をルナはそっと握り締めた


『リッコ だめじゃない 心配したのよ 一体 どこへ行こうとしてたの?』

「わからないの…、ここはNYなのに 私ったら日本にいる錯覚に陥ってたみたい
目が覚めてルナのメッセージ読んだら なぜか自然に体が起き上がってね…気がついたらタクシー乗り場にいたの…」


サイドテーブルにルナが書いた
メモのメッセージが開いたままになっていた


―リッコへ

泣きたいときはね 我慢せずに泣けばいいよ

大丈夫よ
世界の中心にいるリッコなら幸せなんてすぐに見つけられる

NYの街をファインダー越しにSTOPさせて
リッコの撮った世界をたくさん見せてよ

でも 一番見たいのはリッコの笑顔よ

お父さんに心配掛けちゃダメだよ

じゃあ また来るからね

そのときは NYの観光ガイド よろしくね^^

―ルナ



リツコの瞳からまた大粒の涙が零れ始めた


「やっぱり…ダメなのよ 私」


『何がダメなの?』


「ルナが傍にいないと…私 やっぱり ダメなの
ねえ…帰らないで ルナ ずっと そばにいてルナ…」

枕に次々零れる涙をルナは拭った

『リッコ そんなに泣いたら 涙 無くなっちゃうよ(苦笑)』


リツコの父はそんな二人の様子をただ黙って後ろで見ていた








『いま リッコは傷ついてボロボロなの
一人ぼっちになれば またリッコの心は折れてしまうかもしれない』


「ねえ ルナ… ルナは私より…リツコさんの方が大事なの?」


ルナは目を閉じた


『どちらも大事よ』



どうしてだろう…
どこか冷静な自分がいた


きっと予感していたのかもしれない

それはルナがNYに行くといった
あの夜から…

心がざわざわとなにかわからない不安に駆られて
ルナの笑顔が消えていく夢を見た


”ルナのことをお願いね”
リツコさんがそう言って瞳を潤ませたあの夜


”君の名(ルナ)をずっと呼んでる”と
リツコの父からの電話にニューヨークに慌ててとんだルナ


ずっと前から分かっていた


ルナとリツコさんの深い絆


それは紛れもない 
愛であることを…