TYPE HTM/Runa&Emi(ルナ&エミ)parV


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                    【〜Only you〜ふたつの理由〜@】 

 

                           


6月の梅雨の合間の晴れの日


ニューヨークから戻ったルナと海が見える公園に出かけた


ここは去年 デートで来た場所だった
遊歩道を歩きながら…なぜか言葉少ないふたり


見覚えのある石製のオーナメント
その前のベンチでルナの手を引き立ち止まった


「ねえ ルナ このベンチに去年も座ったの憶えてる?」


『う〜ん どのベンチに座ったなんて憶えてないよ  
エミィは細かいことなんでも憶えてるね(苦笑)』


思い出のベンチに座り…しばらく海を見ていた


海からの吹く風がふたりの髪を靡かせる
見上げた空の青さが眩しかった






ルナが折りたたんだレポート用紙を差し出した


『エミィ スピーチ文読んだよ うん なかなか上手く書けてたよ』


『それで 友達の結婚式っていつ?』


「今月の最終の土曜日よ」


『…最終の土曜日…』


ルナは呟きながら目を伏せた




…どうしたんだろう ルナ


ニューヨークでのこともリツコさんのことも
会ったら詳しく話すといっていたのに その話題に触れようとしない
むしろ避けているような気がした


遠くに見える遊覧船に視線を泳がせる
ルナの横顔に思い切って訊いてみた



「ねぇ ルナ リツコさん もう大丈夫よね?」


『……あ、うん…』


ルナは頷きかけた…顔を上げ
何かを決心したように強い瞳で私を見詰めた



『エミィ…』



「……何?…」


『エミィ…、私ね ニューヨークに行こうって思ってる』



「えっ…」


予期せぬルナの言葉に一瞬
心地よく吹いていた海からの風がやんだ



「……」


『向こう(ニューヨーク)でしばらく仕事してみようかって思ってる…』


私の頭の中でいくつもの?が渦巻いた

どうして? 
チャンスはこれからもあるって?
その話は見送ったんじゃないの?
それとも…?
リツコさんとなにかあったの?



いくつもの?の言葉を束ねて 
一呼吸した
そして 冷静にルナに問いかけた



「詳しく話して…ルナ」



『帰国する日の朝 NYで活躍する日本人女性ライターに会ったの…。
短い時間の中 その人の取材に同行してマンハッタンの街を一緒に歩いた
エネルギッシュに動く世界の中心の街に私の心は揺さぶられたわ
”時間は貴女を待ってくれない”と語った その人の瞳にも魅かれた
そして…夢に向うこと考え直したの それがひとつの理由よ…』


「ひとつ…の理由?」


『もうひとつ…理由があるの』



それはね…と
空を仰ぎルナは目を閉じた



閉じた瞼の裏側では
リツコの父の言葉と
その夜の出来事を思い出していた