Runa&Emi(ルナ&エミ)partV


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                    【〜believe in love〜6〜

 

                           

「断るなんて…本当に後悔しないの? 夢を叶えられるチャンスかもしれないのに…」


先週、ニューヨーク行きを社長に
薦められたことをルナは詳しく話してくれた


『後悔しないよ…。今でなくても チャンスはこれからもきっとあると思うから
それに いまはエミィがこうして側にいるから…毎日 仕事 頑張れるんだもの』


「ルナ…」

 
ルナの強い愛を感じて涙が溢れた
私たちは離れない…そう信じてた







予期せぬ出来事が起こったのは
それから数日後のことだった


亜紀子の結婚式で友人代表のスピーチを頼まれ
書いた文を見てもらおうと仕事帰りいつものカフェでルナを待っていた



約束の時間はもう30分も過ぎていた


(ルナ どうしたんだろう…?)


Callしてみたが電波が届かないか…電源が…の
アナウンスが流れるばかりだった


忙しいルナにはよく待たされた…


きっとまた会議か打ち合わせが長引いているのかもしれない
それか、連絡する間もなく慌てて地下鉄に乗り込んで
電波の届かない駅を過ぎているのかもしれない


鳴らない携帯を握り締め…窓ガラス越しに雨の街を見詰めた


間もなく1時間も過ぎようかという頃だった
二杯目のカプチーノに口をつけたとき聞きなれた着信音が鳴った


『エミィ 連絡遅くなってごめんね…。 実は…今日はそっちに行けそうもないの』


ルナの声はいつになく沈んでいるように響いた


「まだ仕事が終わらないの ルナ? 私なら大丈夫よ あと少しなら待ってられるわ
待ちぼうけは慣れてるし(苦笑)」


『・・・』


なにか嫌な予感がした


「ねぇ ルナ なにかあったの?」


『ん…。あのさ エミィ  私、明日 ニューヨークに行ってくるね』


「えっ…明日って? そんな急にどうして? 仕事なの ルナ?」


隣に座ったカップルが私の声に振り返った


知らずに声のトーンが上がっていたのだろう
携帯を耳に当てたままカフェの外に慌てて出た


『詳しいことは戻ってからゆっくり話すわ…エミィには心配かけたくないのよ』


そのまま電話を切ろうとするルナに訴えた


「ちょっと待ってルナ…行く理由も教えてくれないなんて すでに心配かけてるじゃない」


『・・・・』


数秒間の沈黙があった 


『実は…さっき リッコのお父さんから連絡があったの…。』


「お父さんからって…。な…なにかあったの?」


『…リッコが…睡眠薬を多量に飲んで病院に運ばれたって…』


「えっ…」


驚いて声が詰まった


「そ、それで…リツコさんは?」


『幸い命には別状はないらしいけどね…』


ホッと胸を撫で下ろして浮かんだのはリツコの大きな瞳だった

惚気話をしてルナと笑い合っていた
幸せそうなリツコの顔が過ぎった・・

(リツコさん 一体 何があったの…)


そういえば…

”リツコの今の彼 評判よくないから心配してるのよ”

先日のミチネエの言葉を思い出した



『エミィ 聞えてる?』


「あっ…うん ショックでボーっとしてた…」


ルナが続けた


『…リッコのお父さんに、すぐ来て欲しいって言われたのよ
リツコは君の名前ばかり呼んでいるからって…』


ルナの名を呼ぶリツコが目に浮かんだ


「う…うん わかった 行ってあげて…。
だってリツコさんはルナの大切な親友だもの…」


『すぐ戻ってくるからからね エミィ』


なぜかわからないけど 胸がざわめいた…


二人を阻む何かが糸を引いているようで…
言葉とは裏腹に心の中でルナを引きとめた


(ルナ…行かないで…)


カフェをあとにした私は
雨の降る表通りを傘を差すのも忘れて歩いていた