URuna&Emi(ルナ&エミ)partV


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                     【〜Her Lingering scent〜6〜

 
                           

胸に顔を埋めた私の背中をルナは抱きしめた


『エミィ 聞えた?』


「うん…ア・イ・シ・テ・ルって聞えた…」


やわらかな感触のなか耳に伝わるルナのハートの囁き…。


『…ハートで愛を囁いたのはエミィだけよ…(微笑)』


ルナの黒い潤んだ瞳の中に至福の笑みの私が映っていた…。


幸せよ…ルナ 
このままずっとこうしていたい







雨のリズムが弱くなってきたねと窓のロールカーテンを引いたとき
思い出したようにルナが訊いた


『ねっ エミィ もしかして昨夜は家に帰ってないの?』


そうだった…昨夜のこと
今度は私がミサオとの事をルナに話す番だ
コーヒーカップをテーブルに置きなおして深呼吸した


「ごめんね ルナ 私…」


『また謝るの? エミィ(苦笑)』


「…昨夜、私も昔の恋人に会ったの…。でもね 誤解しないで ルナ…」


『まだ何も訊いてないのに 誤解しようもないじゃない(苦笑)』


ミサオとの出会い…と別れ
そしてトオルのライブに急いでた日の偶然の再会から…
昨夜を一緒に過した経緯まで全て話した


ルナは、ただ頷いて最後まで話を訊いてくれていた


『…エミィの恋した人 素敵な人だったんだね(微笑)』


「そのひとの名前は?って訊かないのね」


『昔の恋人の名前なんか 別に知る必要ないでしょ…』


「そうだね…」


『名前よりか訊きたいことひとつある』


「何?」


『エミィも その彼女を深く愛してた?』


「…うん…愛してた」


ルナは私から視線を逸らしクールな笑みを浮かべた


『エミィ…私は過去には嫉妬しないよ』






朝から降り続いていた雨が上がったのは
夜になってからだった…


『やっと雨が上がったね…』


ルナが、窓を開けた


涼しい風が部屋の湿った空気のなかを抜けたとき
気のせいなのだろうか…
ふっと…甘い香りが鼻先を霞めた気がした


そうだ…あのコロン


いつか洗面台の下で見つけたピンクの小瓶を思い出した 


あの時、答えてくれなかった質問をもう一度してみよう


「ねぇ ルナ…訊いていい?
あのピンクの瓶のコロンは、誰のなの?」


『…コロン?』


「洗面台の下にあったでしょう…」


ルナは一瞬、首をかしげた


『洗面台?…。あ〜…あのコロンね』


「…うん」


『まだ気になるの?』


私の頬に触れてルナは笑った


『…あのコロンはサオリへのプレゼントにと選んで買ったコロンだった。
でも 渡す前に別れた(苦笑)それで…当時ルームシェアしてたリッコに使う?
って訊いたら  喜んで貰ってくれたの…。だから あれはリッコの忘れ物…』


「そうだったの…」


『もう 捨てなきゃね…』


「リツコさんの忘れ物なんでしょう 捨てちゃっていいの?」


『…いいでしょう 保管期間はとっくに過ぎてるもの(笑)』



『この部屋の 〜Lingering scent〜残り香は エミィの香りだけ…ずっとね 』


ルナの腕のなかに再び包まれたとき
私の中で悶々と燻っていたすべての事が消え去った