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【〜Her Lingering scent〜5〜】
カップを持つ手が思わず揺れた
「…会ったって…どうして?」
彼女との出逢いは仕事を通じてだった・・・とルナが話し始めた
いまは同じ企画には携わっていないが彼女の勤める会社とは
たまに取引があるからすれ違う事だってあるという
それなら会ったじゃなく…すれ違ったでいいのに
よけいな気を揉ませないで…と心の中でルナを責めた
おまけに彼女の名前(サオリ)まで さらりと口に出すから
頭ン中にインプットされてしまったじゃない…
『エミィが言うように 彼女(サオリ)の事 深く愛していたよ…』
深く愛してた…
たとえ過去形でもルナの言葉に胸が締め付けられた
「そんなに愛してたのに…なぜ別れたの?…」
『……』
ひと呼吸おいてルナは長い煙を吐いた…
『彼女はね 既婚者だったんだ…。それが別れた理由のすべてじゃないけどね』
『私はひとりだから…寂しい…逢いたいと毎日 彼女に無理を言い…。
彼女は今の状況を分かってくれないと私を責め…そんな繰り返しばかりで
いつしか 心がね
かみ合わなくなってしまったんだ…』
遠い目をするルナの脳裏のスクリーンには
いま彼女(サオリ)を映し出しているのだろう…
ルナの表情を見るのが辛くて私は目を伏せた
「…」
部屋に響くミディアムスローなメロディーが切なく
ふたりの沈黙の合間を流れる
二本目の煙草に火をつけるルナの横顔を見詰めた
「ねぇ ルナ…。サオリさんとは話したの?」
『話したよ…』
「どんなこと?」
『主に仕事の話・・・。 あと…プライベートは充実してるの?って聞かれて…』
「うん…」
『いまとても充実してる とても愛する人がいるから…。って答えたよ』
まっすぐ私を見詰めるルナの瞳に愛を強く感じた
『エミィ あとはなにが聞きたい?』
髪を撫でるルナの胸に顔を埋めた
「ルナのハートの音…」
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