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【〜Her Lingering scent〜1〜】
床に座り込んだままマユは
二つのワイングラスをじっと見詰めた
「やっぱ 話したんだ それでエミさん出て行ったんだね…」
『…隠し事したくなかったからね ただ、話すタイミングを誤ったなと後悔してる…』
「エミさんにサオリさんのことは話してないの?」
『・・・うん 話しそびれた…っていうか 聞きたくないって耳を塞いで出て行ったからね…』
ショックだと悲しみに歪んだエミの顔が浮かんだ
「そうなんだ… エミさん傷ついてるでしょうね…」
『私が悪いのよ…。 でもね エミと出会う前の過去のこと
そんなに責められることなのかなって思ったりもしたわ・・・』
「過去のことだと許してても・・・その相手が身近な人だと知って複雑な気持ちだったのよ
とってもルナを愛してるのよ わかるわエミさんの気持ち」
『私だって、エミを愛してるからこそ 全てを話したいと思ったのよ…』
「愛してるからこそか・・・」
はぁ〜っとマユが溜息を床に落としたとき
ピー♪
テーブルの上の携帯が充電切れを知らせた
切れた携帯を手にしたとき ふっと思い出した
『そういえば マユ さっき電話で エミに謝ってほしいって言ってたけど 何のこと?』
「あっ…う…うん…このまえね トオルのライブでエミさんに会ったとき
睨んじゃったから きっと不快に思ってるだろうなって…」
『何も言ってなかったけど・・・どうだろう 気にしてないと思うけど…』
「私 エミさんに嫉妬してた ルナに愛されてるのが羨ましくて…。それにあの日
トオルまでがエミさんを好きでLOVESONGまで書いてたって知って
とても悔しかったの…私の欲しいもの望んだものを全部手にいれてると思うとね・・・」
壁掛け時計が午前1時を指していた
『もうこんな時間 マユ もう寝ましょう
さっきも言ったけど お説教はほんとに今日限りだからね…。』
ワイングラスとボトルを持ち立ち上がった時 マユが言った
「ねぇ ルナ・・・ 私 もうお酒やめる〜!」
『ホントに? やめられるの?(苦笑)』
「…そっ…そうね いっきには無理かもしれないけど…量を減らして…いくわ」
マユの声は自信なさげにだんだん小さくなっていく
勢いで言ったことに慌ててるのが分かる
マユの禁酒宣言を聞いたのは今回が初めてではない 以前だって2週間で挫折したのを知ってる
私はワザと明るく言った
『じゃあ 酔っ払いからの電話はもうなくなるってことね(笑)』
「う…うん・・・(苦笑)ねぇ ルナ 」
『ん…?』
「このまま友達…でいてくれるよね?」
『勿論よ(微笑) …マユも早くいい恋しなきゃ』
「いい恋か〜ルナに言われるとやっぱチクッって胸が痛くなる〜(苦笑)」
マユがベットで寝息を立ててからも 私はソファで眠れずに朝を迎えた
考えてた・・
リツコのときも…マユのときも…
私はなんて虚しい短絡的な行動をしたのだろう
あの頃…身体中に沁みついたサオリの消えない残り香が
いつまでも私を苦しめていた
燻り続けるサオリを消し去りたいばかりに
目の前の温もりに思わず手を伸ばしてしまった
どうかしてたんだ 私…
ちゃんと話そう 過去の恋のことも
エミには私の全てを知って欲しい
誰よりも深く愛してるから…
ブランケットに微かにエミの香りがした…
〜Her Lingering
scent〜
彼女の残香
ずっと消えないでほしい
エミィ…
早く戻ってきて
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