TRuna&Emi(ルナ&エミ)partV


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                     【〜Past love〜回想〜6〜

                            



締め切り間近な原稿を書いていた 日曜の午後 
テーブルの端っこで携帯が振動した

画面に表示されたのはマユの番号だった

いま近くまで来てるの すぐ帰るからというマユに
1時間だけの訪問を許したのだった。




インスタントの薄いコーヒーを入れたカップを手に
マユは部屋をぐるりと見回した


「ルナの部屋って…なんだか落ち着くわ〜」


『こんなに散らかってるのに、どこが落ち着く部屋なのよ(苦笑)』


私はテーブルと床に…乱雑に散らばった書類たちを目で示した


「ううん〜そうじゃなくて(笑)きっと…ルナがいるから落ち着くのよね」


コーヒーカップをテーブルに置き
なにかふっきれた表情でマユはエクボをみせた


「ルナ…、実は 私 彼(トオル)と別れたの」


『えっ 別れたっ…て どうして?』

 
「…う…うん」


そういえば…先日 マユにきついこと言ったことを思い出した



数日前 いつもの「聞いてよ〜ルナ」から始まった 酔ったマユからの電話 
彼(トオル)には、やはり女性の影が絶えないだの…約束した曲もつくれないと言われただの
他の人に交際を申し込まれて 気持が揺れてるだの…
いい加減な話ばかりに 連日の仕事の疲れで苛立っていたのだろう


『だから どうしたいわけなの?本気じゃないなら つまんない恋なら もう別れたら!
それと酔っての電話は今夜限りでお断りだからね!』

…と一方的に電話を切ったのだった
あとで言い過ぎたかなって反省したのだったが…


『もしかして あのとき 私が別れろっていったから?』


「ううん…そうじゃない…。気付いたの…自分の気持ちに嘘ついちゃだめだってこと」


『嘘…?』


「きっと私…ルナに気にかけてもらいたくて 彼と付き合ってたのかもしれない
なんだかね…彼もそうだけど どの人といても楽しくないの〜」


マユがあの夜と同じ縋るような目をして私を見詰めた


「ねえ・・・ルナ ルナがサオリさんのこと忘れるまで待つわ」


『……』


「……」



(心が空っぽになったからって恋なんて すぐできるわけじゃない
私はね そんなに、簡単に誰かを好きにはなれないのよ…)


心で呟き…マユを見詰めた


ぎこちない沈黙の中…俯いたマユに ゆっくり答えた


『マユ…。私は彼女(サオリ)を忘れない。それと恋はしばらくしない。ううん できないのよ…。ごめんね マユ…。貴女の気持には応えられない』


「…」



「わかった じゃあ 私はずっとルナに片思いしてる」



マユは、立ち上がりコーヒーカップをキッチンに運び
バックを持ち帰るわと告げ玄関ドアに向かった







あれから…2年



あの日 エミに出会っていなければ


しばらく恋しないは…
継続しているはずだったのに


「ルナ…、もしかしてエミさんに私とのこと話したんじゃないの?」


マユのその台詞で…
一気に現在(いま)に引き戻された




                                                     





ほめ