TYPE HTMRuna&Emi(ルナ&エミ)partVXん


 INDEX

                  【〜Past love〜回想〜5〜ルナとマユ〜

                            



長引いた会議を終えて駅に急いでる夜だった
懐かしいメロディーがバッグの中から聞こえた


えっ…まさか…? 


慌てて取り出した携帯にはメールマークが点滅していた


メールを開こうとした時…


クラクションの音と同時に名を呼ばれた

車道の方にふり向くと数メートル先 徐行するステーションワゴンが見えた

「ルナ〜♪」

助手席の窓からマユが手を振っていた

『マユ…』

その声に立ち止まると…ワゴンもハザードランプを点滅させ停車する

ほどなく助手席のドアが開き車を降りたマユが
ガードレールの切れ目を抜け駆け寄ってくる

「やっぱり ルナだったんだ〜♪…」


『車道から名前呼ばれるから びっくりしたわ』


「いまね スタジオで練習終えて帰るとこなの〜♪」


数メートル先 マユの頭越しに見えるステーションワゴンに目が行く
運転席にはハンドルを持つ長髪の青年が見えた
私の視線を追うマユが…彼なのと言った

『もしかして あのとき話してた彼?』

「うん」

『振ったんじゃないの?』

マユは左右に首をふり笑みを浮かべた

「それがね〜! この前、一緒に店を出て行ったひと(女性)は彼のファンのひとだったらしいの
ひとりでかなり酔ってたから タクシーを拾える場所まで送っていっただけだって…」

『なるほど…誤解も解けて元のさやに収まったわけね 』


「うん まあ そんな感じ…」


家まで送っていこうかと言うマユに
仕事の途中だからと…手に持った携帯を握りしめた
(わたしったら…仕事終わってるくせに…)

はやく、ひとりになりたかった…
その理由はさっきの未開封のメールが気になったからだ
送り主が誰だか分かっているだけに…



「あ、そうだルナ〜、ライブに招待するから 絶対に見に来てね〜♪」


『わかったわ〜 楽しみにしてる』


マユに手を振ると、運転席の長髪の青年が会釈するのが見えた








あのメロディーを鳴らすのはサオリしかいない


地下鉄の駅につながる階段を下り
シャッターが閉まった店の端で携帯を開いた


件名:久しぶりね

本文:
ルナはまだ仕事中なの?
いま私は仕事帰り
いつものBARでひとりマティーニ飲んでるの 
トラブル続きでとても凹んでるわ
なんだかルナの顔が見たくなって…


メールを2度読んで携帯を閉じた…


きっと仕事でなにかあったんだろう
ひとりカウンターでカクテルをもつサオリの姿が頭を過ぎる

すぐにでも飛んで行きたい衝動に駆られた


逢いたい…
逢いたくて堪らない

でも…ダメ

駆け出しそうになる気持ちを必死で抑えた


冷静になろうと目を閉じ自分に言い聞かせた


一呼吸して 


もう一度メールを開いた



サオリ…

私たちは別れたんじゃないの

これじゃあ まるで
進行形の恋人に送るメールじゃないの

あんなに辛い想いをして  幾夜も泣き明かして
私達はもう2度と逢わないって…あの夜 決別したんじゃない


私は…寂しさを紛らわす相手なの
そんな慰めのお酒に酔って甘えられたら 
また サオリを求めてしまうじゃない
そしたら私たち
また…同じこと繰り返すだけじゃない

もう忘れましょう

お願い 
もう忘れて…私のこと

 
文字の代わりに言葉を打ち込み
携帯を閉じた


地下鉄の駅の改札を抜け…ふっと思った
やっぱり 車で送ってもらえばよかったかな…(苦笑)





それから数週間後


マユから招待されたライブの日に 
彼だという例の長髪の青年を紹介された


『ルナです よろしく』

「はじめまして トオルといいます マユからいつもお聞きしてますよ」

トオルという青年は整った輪郭に切れ長の涼しい目で笑みを浮かべた

なるほど、モテそうだなと思った
彼は挨拶だけ済ますと失礼しますと、急がしそうに楽屋の中に戻っていった


トオルと言葉を交わしたのは…この一度だけだった


『彼がね〜私のために曲つくってくれるんだって〜』


トオルのうしろ姿を見送りながらマユは隣で幸せそうに目を輝かせた


このときは想像もしなかった


まさか…彼(トオル)がのちに出会う
自分の恋人(エミ)に想いを寄せるなんて

そしてLOVE SONGを贈るなんて… 




                                                     





ほめ