Runa&Emi(ルナ&エミ)partV


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                 【〜Past love〜回想〜4〜ルナとマユ〜

                            



酔って電話するマユの癖を知ったのはこの夜からだった…


『マユ いまどこにいるの?』


「ねっ いまから ルナの部屋にいってもいい?」


『質問の答えになってないじゃない…。電話で話せないことなの?』


マユは問いかけに答えず最寄駅と横文字の店の名前を告げ場所を説明している 
その声を聞きながら、空いてる右手でテーブルの上に広げた原稿を整えた

溜息まじりに時計見ると午後9時を回っていた
明日の仕事の準備があるから 到底 今夜は出かけることなどできない


『今夜はあいにく付き合えないわ ごめんね マユ』


「え〜そんな〜…じゃあいいわ! ここで一人で酔ってる………」


語尾がはっきりきこえないまま電話は切れた


『えっ? もしもし…』


…電波が悪くて切れたのかな?


コールバックをしようとした指を止め ふと思った


…いや きっとこれは作戦なんだろう


切れた携帯の画面に呟いた


…マユ 残念ね 作戦失敗よ(苦笑)


 


翌日 



夕方 仕事が終わり駅に向かう途中 携帯が鳴った…


昨夜は酔っててごめんなさい…と詫びるマユからの電話だった

電話しながら目に付いたイタリアンの店の看板に
先週取材で訪ねたレストランを思い出した


ちょうどいい 夕飯も兼ねて昨夜の話も聞こうとマユを誘った







マリネのサラダをフォークで口に運び 美味しい〜とマユはエクボを見せた
ここは有機野菜のサラダとトマトベースのパスタが美味しいと自慢の店だった 



「あれからしばらく ルナの電話待ってたのよ〜」


(…思ったとおり 突然切った電話は作戦だったんだ)


『じゃあいいわって そっちが切ったんじゃない なんで私から掛けなおさなきゃいけないの』


「そ…そうだね…。ルナってクールね なんだか余計惹かれちゃうわ〜」


『昨夜は、ほんとに忙しかったのよ で…あれから ひとり酔ってたの?』


「ううん〜、それがね 隣に座った2人組の男の子達と音楽の話で
意気投合しちゃって 閉店まで一緒に飲んでたの〜♪」


『まったく ちゃっかりしてるわね あの切羽詰まった声はなんだったの?』


「違うのルナ  昨夜はほんとに悲しくって、ルナに聞いて欲しかったの」


『だったら 今 聞くわ…何があったの どうしたの?』


パスタをフォークに巻きつける私の手をじっと見つめてマユは頷いた


聞けばマユは、新しい恋の相手を見つけたんだという
失恋から日が経ってないのに、もう夢中になれる相手ができるなんて
ちょっと羨ましく思った

私はまだまだ彼女(サオリ)を忘れられそうになかった… 
どんなキレイな素敵な人が現れても 心は動かない自信があった
動かない いや…きっと動きたくないのだろう  
いつまでも前に進めないネガティブな自分を情けなくも思った

 
マユの恋の相手は今度入ったバンドのギタリストだという


「彼ね 作詞作曲もするのよ 才能あるしそれにカッコイイの〜」


『よかったじゃないの 悩み事じゃなくて お惚気話じゃないの?』


昨夜が3度目のデートだったらしい
マユはひとりであの店で飲んでたわけじゃなく その彼が一緒だったらしい


「彼がね 途中で知らないひと(女性)と出て行ったのよ〜」


『どういうこと?』


「一緒に飲んでたら彼に声を掛けてきたひと(女性)がいたの 
彼ったら慌てて席を外して そのひととドアの前でしばらく話してたのよね 
それで席戻ってくるなり "ごめん〜ちょっと彼女を送って行かなきゃならないんだ”って私を残して出て行ったのよ〜ひどいでしょ〜!」

30分後には戻るって彼からメールきたけど
もう店を出て帰るところだと嘘ついたの


その場面を思い出して悔しそうに、マユは涙を浮かべた


「ねっ どう思うルナ〜?その女は彼とどういう関係なんだろう」


『私に聞いたって知らないよ 本人に聞けば…』


「きっと彼は他にも付き合ってるひとがいるんだわ〜」


唇を噛むマユの顔を見ながら小さな溜息を吐き
バックから煙草ケースを取り出した


煙草に火を点けマユに言った


『そんなオトコ やめちゃいな〜』


「そうだよね ルナの言うとおりだよね よ〜し あんな奴 振ってやるわ〜」






レストランを出てマユを電車のホームまで見送り
じゃあねと上げかけた私の手をマユが不意に握りしめた…


「ルナならいいのに…」


『…え…何?』


「ルナが……・…」


ホームに滑り込んできた電車の音に言葉はかき消され…
そして開いたドアにマユは慌てて手を離し乗り込んでいった




                                                     

ほめ