Runa&Emi(ルナ&エミ)partV



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                       【〜Lost love talk〜

                            


ワインの酔いでマユの言動は更に大胆になる


「ルナを酔わせたい…理性失くすくらいにね
そしたらあの時みたいに…抱いてくれるかもしれないから…」


再びワインを注ごうとする腕を掴みグラスを取り上げた


『マユ いい加減にしなよ!』


「・・・」


強い口調に絡んだ腕は力なく離れ…
ソファから絨毯の床に滑るようにマユは座り込んだ


『あなたは何を求めてさまようの…? 夜毎 お酒を煽って身を持ち崩して 
自分をそんなに追い込んでどうするの?』


「自分でも…どうしてだか…わかんないの…」

消え入りそうな声で
うなだれたマユの背中が震えていた


『お説教も今夜限り…! わたしはもうあなたには何も言わない!』


こんな台詞 もう何度目だろう…

もうひとつのワイングラスに注がれた
ワインを揺らしながらためいきをついた


揺らすグラスにエミの顔が浮かんだ



「ルナ…聞きたいの…。マユさんとはどういう関係だったの ルナの元恋人?」


『恋人じゃなかった…けどね……一度だけ…マユを抱いたわ』


「愛していないのに…抱いたの? なんだか悲しい…ルナってそんな人なの…」


今夜のエミとの諍いはそんな会話から始まった…








マユとの出会ったのは2年前
担当してる雑誌の企画で、あるアマチュアバンドを取材した
そのグループの紅一点でキーボード奏者だったのがマユだった。


インタビューに答えるマユは、ポニーテールがよく似合う
笑うと頬にエクボができる 小柄な可愛い女性だった

"私、人の心に響くようなそんな曲をたくさん弾きたいです”


明るく夢を語ったあの時のマユは瞳は輝いてた


取材から1ヶ月後…ルナ宛にライブのチケットが送られてきた


【私の最後のライブになります ルナさんをご招待します 
ご都合よければ 是非来てください  by マユ】

最後? どうしたんだろう?
気になった私は、入っていた予定の都合をつけてその日ライブに駆けつけた


ライブが跳ね、他のメンバーが楽屋に戻っていく中 マユがステージから降り駆け寄ってきた


「ルナさん 来てくれてありがとうございます。あの…このあとお時間空いてますか?」


『ええ、時間はいいけど…?マユさんは打ち上げとかあるんでしょ?』


「大丈夫です!また後日 送別会があるし… だから今夜は断りました〜」





会場近くのCAFEでマユを待っている間
私は長いメールを書いていた…相手は…当時の恋人…サオリ


書いたメールを読み直し削除した
(…やっぱり 直接話そう…)
溜息まじりのひとりごとをコーヒーと一緒に飲み込んだ


コーヒーカップをテーブルに置いた時
息を切らせてマユがやってきた


「…ルナさん 遅くなってごめんなさい〜」







『今日のライブ よかったわよ…でも 最後って…どうして?』


カフェオレを一口流しこんでから…マユが深呼吸した


「実は…私 失恋しちゃったんです…。だから…もうキーボード弾きたくなくて…」


マユの話によると 同じバンドのドラマーがマユの恋人だったらしい
実はその彼に他に付き合ってる女性がいたと知り…ショックでバンドを辞めると決心したらしい
う〜ん よくある話だなと思いながらも…この手の話の聞き役も慰め役も私はとても苦手だった


『大丈夫 またいい人きっと現われるよ…』


そんなありきたりの言葉しか出てこない


「…うん…」


しばらく俯いていたマユが顔をあげた


「あの…ルナさんには いま 恋人いるんですか?」


『う〜ん…まあ いないといえば嘘になるかな…』


「そうですよね いるに決まってますよね〜ルナさんすてきだもん!
どんな彼なのかな〜ルナさんの恋人って」


『でもね 私も…まもなく失恋組みになるかもしれない(苦笑)』


「え〜どうしてですか?」


どうして…って どんな彼って
いえるわけないじゃない…

実は恋人は彼じゃなくて 彼女だということ


そして…その彼女が人妻だということも…



                                                     






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