TYPRuna&Emi(ルナ&エミ)partV


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【〜Back in love with you 〜】



                            



肩を抱いていた腕が離れ小さな溜息がもれた


『彼女…ルナって名前なんだ・・・』

「…」

黙って頷く私にミサオは苦笑いをした


『彼女の名前 あえて聞かないでいたのにさ〜!あ〜あ しっかり憶えちゃったじゃない〜』 


「・・ごめんなさい」



『きっと…彼女…今、エミのことを想ってるんだよ…。 
やれやれ やっぱ負けちゃったか〜 私のかけた魔法も解かれちゃったしね…』


『私ったらどうかしてるね 彼女いる人を誘惑しちゃダメだよね
今夜は酔っ払ったかな〜!あ〜私ったら お酒弱くなっちゃったのかな〜(笑)』


ミサオの笑う瞳が寂しげで
思わず華奢なその腕にもう一度寄りかかりたくなる衝動を抑えた



〜Back in love, back in touch〜♪
〜Back in love with you  I wanna be…〜♪


部屋の中 二人の沈黙の間に
静かに流れてるメロディーが切ない




ふたりは赤いソファに深く座りなおした
テーブルの飲みかけの缶コーヒーにミサオが手を伸ばす


『ずっと…後悔してた エミを置いてロス行った事… 
エミに恋人が出来たって聞いた時 "よかったね〜”なんて笑顔で言ったけどね 内心辛かった…』

「…」

私に話す間を与えずにミサオはしゃべり続けた…

『今夜 一緒にお酒飲もうって誘ったら エミが彼女とケンカしてっていうから…
もしかして今夜は…復活愛ありの予感ありかも〜ちょっと期待した自分がいたよ(笑)』


私も、予感してたのかもしれない…そのハスキーな声と見つめる瞳に触れられることを


『知ってるでしょ〜エミ ちょっと強引な私の性格〜(笑)』


強引・・
そのセリフでふっと脳裏に浮かんだのは空港でのミサオとの別れの場面だった


「強引なら…あの時・・」

『…ん?…』

「あの時 どうして…強引に連れて行ってくれなかったの・・」


あの日 ミサオは自分の夢に向かって飛び立とうとしていた 

“エミも連れて行きたい…”ドラマチックな台詞を残すミサオに“もう遅いわ…”と涙で責めた
返事を待つ…沈黙の間に搭乗アナウンスが流れた時
ミサオは 私の手を哀しく振りほどいた
そして涙の粒を拭い“さよなら・・・エミ”と頬に最後のkissをした

ゲートに向かうミサオの背中に心で叫んだ

"あなたは私より…ダンスと夢が大事なんでしょう…”





遠い日に望んだ強引な腕は今夜また・・・私から離れた


『・・ごめんね エミ…』


目を伏せたその横顔が哀しげだった


「ミサオさん ごめんなさい…私」


ミサオはソファから立ち上がり窓のカーテンを開けた 
隙間から見えた空は夜明け色だった


『夜明けだね…』



「…ほんとですね…少し眠りましょうか…」


私もミサオの立つ窓に近づいた


『エミ…彼女のところへお帰り・・・』


窓から空を見上げ呟いた ミサオの背中が震えていた…








                                                      

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