TYPRuna&Emi(ルナ&エミ)partV


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                【Stop motion〜I want to hug you〜】


絡み合った瞳のなかで赤いカクテルが揺れた


流れていたメロディーが途切れて
ほどなくマスターが手にしたCDを持ってきてミサオに差出した


『はい ミサオちゃん 12曲終了〜♪』


『あっ マスター サンキュー♪ 無理言ってごめんね』


『どういたしまして〜! と・こ・ろで…お二人がリピートしてほしいLove message
…じゃないや 訂正(笑)Love songは見つかったかい?』


マスターは髭をたくわえた顎を撫でながらミサオと私に交互に微笑んだ


戸惑い顔の私にミサオが耳打ちする


『マスターはね、実はゲイなの…。 だから気のしないでいいよ…エミ(苦笑)』


ミサオの息がかかった時、私の思考はショートし始めていた







途切れたメロデイーが再び奏ではじめた
ハートのCDジャケットの中のタイトルをミサオがなぞり示す


『この曲…リピートしてもらおうかな〜♪』


〜I want to hug you〜♪


そしてそのタイトルを声に出してミサオは読んだ


『I want to hug……Emi…』


(わたしはエミを抱きたい…)
心の中で訳してみた…



…本気なの?ミサオさん 酔った勢いで誘ってるの


答えを聞くのが怖くて口に出せなかった


こんなスマートな誘い方するなんて
きっと私だけじゃないはずね…


恋愛上手なのは引き込まれる話術の中にも窺える


…でも そんな ミサオさんが好き たまらなく好き


(わたしはエミを抱きたい…)

…YESといったら軽い女だと思われちゃうかな…
ううん それでも構わない


わざと目の前の熱い視線を逸らし…俯いた


「…」


『ふふっ エミは可愛いね〜』


俯いたままの私の髪を指先でかき上げながらミサオが囁く


『エミ〜 今夜は帰らない?』


「…」


『…返事聞けるまであと何分待てばいい?(苦笑)』


私は、残りのカクテルを飲み干し
ミサオの目をまっすぐ見つめて頷いた







rendez-vous
愛の場所を求める恋人達がさまよう週末の夜の街


すっかり酔った私はミサオの腕にまきついていた


『あ〜ちょっとエミ〜 STOP〜!』


急に立ち止まったミサオが
バックして転がったヒールを拾いそしてかざした


『ほら〜エミ 大丈夫〜?ヒール脱げちゃったのも 気付かないの〜(苦笑)』


「あ…、ごめんなさい なんだか体が宙に浮いてるみたいで…感覚がないの〜どうしょう〜」


ミサオが笑いながら私の頬を撫でた


『(笑)私のペースに合わせて飲んじゃだめだっていったのに〜
ほら〜 片方脱げたガラスの靴 履かせてあげるよ 酔っ払いのシンデレラさん(笑)』



私はひどく酔ってるのに、まるで素面顔のミサオ
…ほんと ミサオさんってお酒強い(苦笑)
でもね 酔ってるのは お酒じゃなく ホントはミサオさんによ…










ーたどりついた先は…シティホテル


ツインルームに入りロックをかけて

次のドアを開けようとした時

「あ…」


足がもつれとっさにミサオの腕を掴んだ
そして二人してフロアに転がった


『大丈夫〜 エミ〜?』


抱き起こそうとするミサオの首に大胆にも私は手を廻した
今なら、どんな言葉を発しても酔いのせいにできるだろう


「すっかり…酔っちゃっいました…。 …ミサオさん…に…」


『そうか〜エミをすっかり酔わせちゃったんだ〜』


苦笑いするミサオの黒い瞳が目の前にあった


今夜はこの瞳がたまらなく欲しかった…
いま私を支えてるこの腕…

この腕の中で溶けてしまいたい…





冷えたミネラルウオーターを飲み干すと一気に
お酒の酔いだけが…醒めたように感じた



グラスを置きベットサイトのミサオの隣に座ると
華奢な腕が強く私を引き寄せた



『私 エミにどうやら惚れちゃった みたいだ…』


ハスキーな声が熱い吐息にかわった


耳元に這う唇を感じた


耳朶を甘く噛まれた時 お酒の酔いは溶かされた





そんな場面の最中…



…頭の中のスクリーンが突然 ザァーっとノイズ音と共に砂嵐になった




誰かが停止釦を押した



『エミ…』





                                                      

とp