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『一度だけ…抱いたことあるよ 愛してもいない人をね…』
「……」
『なんとなく成り行きでね…。あのときは無性に寂しかったんだ』
私はミサオから視線を逸らした
「……」
『あはっ 最低だね〜あたし…』
どんなリアクションをすればいいんだろう… 頭の中で言葉を探した
『でもね誤解しないでね エミ! その時は好きな人がいなかったからよ 恋人がいたら絶対しないよ!いくら酔っててもね(苦笑)』
『エミの彼女だってそうでしょう…それってエミと出会う前のことでしょ?』
「…うん」
こっくり頷く私の肩をポンポンとミサオが軽く叩く
『じゃあ 問題ないじゃない(苦笑)過去の事じゃん 許してあげなよ〜エミ 彼女だって、きっと私と同じようなときがあったんだと思う…なんとなくわかるんだ〜』
(あのときはしかたなかったの・・・)と話しかけたルナの言葉を遮った 自分を思い出していた
私は涙が出そうになり唇をかみしめた
…ほんとは全部 許してる 愛しているから
…どんなことだって受け入れられる 愛しているから
言葉が途切れてしばらく無言の二人
、
流れるBGMの曲が途切れた時 ハスキーボイスが低く響いた
『今回ね 日本に帰国した理由 実はもうひとつあるんだ…』
「・…もうひとつ?…って?」
ミサオが私を見つめた
『…エミに会いたかったんだ…』
ハスキーな声と惹きつけるその瞳に 早鐘のように私の胸が鳴っていた
『そろそろ 魔法かけてもいい? 今夜、エミが彼女の事忘れる魔法…をね』
ミサオの指先が頬に触れた
その指先の温もりがミサオの魔法だったのだ 私はもう動けなくなっていた
『愛していない人はもう抱かない…。 でも愛する人がいるひとを抱くのはやはりいけないことかな…』
かつて焦がれた黒い瞳が目の前にあった
「ミサオさん…」
〜when I'm lost in your eyes〜
わたしは貴女の瞳に夢中になり… その瞳のなかでわたしは迷っている〜♪
BGMからはそんな歌が流れ…
私の脳裏には…あの夜が映し出されていた
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