Runa&Emi(ルナ&エミ)partV


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 【Night to forget you】
                           



きっと酔っているのだろう…


魔法をかけてあげると…ミサオが私の頬をなぞる


その指先の熱さに胸が震えた


…それは あの時と同じ熱さだった





ミサオがロスに旅立った日の事をわたしは思い出していた


空港で最後の別れの時 


『エミも一緒に連れて行きたい…』


『嘘…そんなこと 今更…一緒にだなんて 
本気じゃ…ないなら 言わないで…くだ…さい…』


嗚咽しながら途切れ途切れに繋がらない私の言葉に
ミサオは首を左右に振り…ポツリと言った


『本気よ…』


涙でミサオの顔が歪んでいた…


『他の人の見送りを断ったのは
エミとふたりになりたかったからよ』


『もう…遅いわ…』


私の頬に流れる涙をミサオは指先で何度も拭ってくれた
そして濡れたままの頬にミサオは口づけをした


…さよなら エミ




離陸した飛行機が雲の向こうに
見えなくなってもわたしは動けなかった


何時間泣いたのだろう


あの日 一生分の涙を流して別れた人
二度と逢うことはないと思っていた人


なのにどうして…
これは運命の悪戯なの…


いまは愛する人がいるのに…


なぜ 貴女は再び私のもとに現れたの…


今夜 同じぬくもりに触れた時
再び呼び覚まされた感情



…お願い
私の中からルナを追い出さないで



だが…誘惑の魔法はすでにかけられていたのだった



『頬熱いね…エミ〜酔ってる?
…それとも私の魔法にかかってるのかな…ふふっ』



『ね、エミ〜 彼女のこと教えてほしいな…』



ミサオのハスキーな声に弱かった


その声に誘導されるように
ルナとの出逢いから…今夜の諍いの理由まで
わたしは全て話していた


ミサオは私の話を始終笑顔のままで頷き訊いていた


持ったままのカシスソーダは溶けた氷ですっかり薄くなっていた



2杯目に頼んだのはミサオが選んだカクテル
それは…やけに赤くて
一口飲むたびに身体が酔いの赤に染まりそうだった





『ね、エミ〜 出ようか…そろそろCLOSEだし…』


『…ええ…でもどこへ?』


ミサオが小声で囁いた



『眠れる場所を探そう…』



…ルナ  今夜は私 
貴女を忘れてしまうかもしれない