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Runa&Emi(ルナ&エミ


INDEX


                    【Blue Moonの瞳〜3〜 】

                            


トオルに連れられてきたのは、例のBARだった


古き良きアメリカを感じさせる店内 流れる懐かしいメロディー
あちこち飾られたPOPな雑貨類に心がなごむ


カウンター席に、ふたり並んで座った。
金曜の夜、店内は程よく混んでいた 


『エミさん、何飲む?』


メニューを広げるトオル


『今夜は満月じゃないけど、エミさんには、やっぱブルームーンかな・・』


トオルが、微笑む


オーダーを告げ、煙草をとりだすトオルの横顔を
ぼんやり見ながら、あの夜を思い出していた



あの夜、トオルが選んだカクテル・・・【Blue Moon】


ルナの黒い潤んだ瞳が
Blue moonのカクテルの中で 揺れた気がした夜


ルナを追いかけて戻ったBAR
待っているのは“彼女”その言葉に落胆した夜


ふと、リツコの顔が浮んだ・・・


(ほんとに、ふたりは友人関係だけなのだろうか・・・)


先日会って話したリツコ
リツコの私を弾く大きな瞳に、嫉妬の炎が見え隠れした気がした



《ねえ、ルナ あなたは、私と出会う前・・・どんな恋をしてきたの?》




『エミさん、どうしたの?ぼんやりして・・・』


煙草を、手に持ち私の顔を覗きこむトオル


―そうだ、マユのこと訊かなきゃ


『あの トオルさん マユさんに会ったってメールに書いてたけど・・・?』


たばこの煙が揺れる


『ああ、この前 電話があったんだ・・・。キーボード奏者が決まったって
 言ったら、演奏を聴きたいっていってスタジオに来たんだ・・・。』


『そうですか・・・』


『ん、それで・・・終ってから、少し話してたらエミさんのこと訊かれたんだ』


オーダーしたカクテルが二人の前に置かれた・・・。
トオルは、ジントニック 私はブルームーン
 

トオルが煙草を灰皿で消し、カクテルを寄せた


『一瞬 エミさんと、マユがどんな接点があるんだろうって考えたよ・・・』


グラスを持つと、トオルが“乾杯”と自分のグラスを軽く当て音を鳴らした


私は、スミレの香りが広がるカクテルに口をつけ 
トオルの次の言葉を待った


『あのひと(女性)・・・ルナさんだったね?』


トオルが強い瞳でみつめた


『は、はい・・・』


マユはこう話したらしい

《そうそう、トオル エミさんって知りあい?この前 CAFEで偶然ルナと会ったの
 その時、一緒にエミさんていう人がいてね トオルと知り合いだって紹介されて
 びっくりしちゃった(笑)それでね・・・》



え、CAFEで会った・・・?
どうしてマユは、ルナの部屋の前で会ったと 言わなかったんだろう?
トオルの話だと、マユはルナと私はただの友人だと強調してるようにとれた
(どうして・・・?)


『なんだか不思議なつながりだね(笑)』


トオルが、煙草を取り出し火をつけ前髪をかき上げる


ふと、トオルに訊いてみたくなった


『ねぇ、トオルさん マユさんのこと愛していなかったの?』


『・・・・』


一瞬 曇った表情をする トオル


しばらく沈黙があった



手に持ったライターの火を点けたり消したりしながら
トオルは言葉を選んでいる様子だった


『明るくていい子だし、最初は好きになったよ。・・・でも 愛してはいなかった』


『・・・愛してなかったの・・・?』


『う〜ん、エミさんには理解しがたいかもしれないけど
僕も男だからね・・・、そんな付き合いもあるってことだよ』


『・・・・』


『マユはね、同時に付き合ってたひとがいたんだよ
だからマユも僕を愛してはいなかった・・・』


トオルの言葉にドキッとした
(同時に・・・それはルナのことなのかもしれないと思った)